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トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International、略称:TI)による2022年の腐敗認識指数(CPI)(注:これは、汚職や腐敗の進行度合いに対する認識のレベルを示す指数です)の調査結果によると、ベトナムは180カ国中77位にランクインしました。2015年頃の調査結果と比較すると、状況はかなり改善されました。しかし、国民全体の法律遵守への意欲やコンプライアンス意識が同じペースで高まっているわけではないと感じています。
1. なぜベトナムでのコンプライアンス(特に不祥事)の問題が多いのか。
コンプライアンス違反や不祥事が発生する主な原因は、以下の3つです。
①「動機(欲望、貪欲、上司や同僚への不満、待遇や業務に対する不満、利益団体からの圧力)
② 相対的な関係の存在
③ 上記の①と②を育てる環境の存在
(1)動機について
『ベトナム人の一部は利己的だ』というコメントがあります。様々な歴史的な拝見があったのですが、もともとベトナム人の性格や習慣等を生み出したのは、封建時代でした。当時、ベトナムの伝統的な産業が農業で地主が農民を奴隷として使用し、たいした価値がないもののみ自分に戻す状況でした。その後のフランス植民地、革命時代における農業組合の場合も、分配が平等に行われなかったです。当然のことながら、そういった拝見の中で、自分を支配する者に対立する傾向になります。
(2)相対的な関係の存在
多くの外資系企業において、経済的な相反や情報の非対称性、管理権限の相対化といった相対的な関係が生じています。このような問題により、管理上の裏の体制(暗黙の行動)が形成される可能性が否定できません。しかし、このような環境があると、不祥事を引き起こす環境を作り出します。具体例を以下に挙げます。
① 出資者(会社の所有者)と従業員(経営者を含む)との関係
② 会社の管理者と業務担当者の関係
③ 日本人管理者とベトナム人管理者の関係
このような問題があることによって、以下のような管理上の裏の体制(言葉にならず、暗黙での動き)になってしまう可能性を否定することができません。
このような状況によって、会社の生産過程の不良・不効率、労働環境の悪化、不祥事の発生を引き起こす主要な原因となります。
(3)不祥事が発生しうる環境の存在
動機や相対的な関係が存在しても、厳しい環境があれば不祥事には至らないかもしれません。逆に、不祥事が発生しうる環境がたくさんあれば、不祥事が発生するはずです。この環境を支える要素としてこの4つのものがあります。
① 管理者の姿勢
- ベトナム人の性格は利己主義に近いですが、自分の意見・出張を公衆にあまり出す勇気がありません。つまり、自分自身も怖がるところがあり、自分より強い人に従う傾向もあります。そのため、会社の指導・指揮するリーダーがどれだけ、十分な権限をもっており、それをしっかり施行することで、従業員に怖がられるような姿があるのかによって授業員の不正行為のコントロールへの影響があります。管理者が強い影響力を持つ(職権主義的なリーダーに近い)存在であれば、従業員はそれに従うことが多いです。そのため、会社内部での創意工夫や責任の委譲に悪影響が出ることがありますが、製造業では管理者のそのような態度が必要とされることが多いです。優しすぎる上司であればそれを利用し隠れて、色々やってしまうことが少なくないからです。
- ベトナム人労働者や管理者とのコミュニケーションが不足している管理者が多いです。信頼できると考える特定少数のベトナム人管理者だけとコミュニケーションをして、それ以外の従業員を無視するケースもあります。そういった管理者は、そもそもベトナム語やベトナムの文化を理解しようとしないことが多いです。また、その関係で、労働者、社員全体に対して会社の理念や企業文化、管理者の思い等をベトナム人従業員に伝える機会も少ないです。
② 内部統制の整備・運営
よく発生する問題は、以下の通りになります。
- 法令・内部規則・その他意思決定の整備が不十分であること
- 会社全体の状況を踏まえて内部統制の仕組みを作るべきところ、内部統制体制の整備・運営をベトナム人管理者に任せてしまい、ベトナム人管理者は自らの都合と計算により、内部統制を運営する可能性があること
- 権限が一部の管理者に集中されていること
- 内部統制の仕組みやその運用実態を把握する機会や方法が不足していること
③ 不正に対する対策
よく発生する問題・状況は、以下の通りになります。
- 不正に対する処分が適法・適正に行われていないこと
- 業務の適正な実施に対するインセンティブ・制裁が不十分に設計されていること
- コンプライアンスや不正管理仕組みの運用に関するチェック・監査の仕組みがないこと
④ コンプライアンス等の教育
よく発生する問題・状況は、以下の通りになります。
- 法令や内部規則、その趣旨を従業員が十分に理解していないこと。
- 教育の効果を確認するプロセスが十分でないこと。
- 社内文化を浸透させる活動が少ないこと
ベトナム ハーザン省 写真家 弁護士 レ・ヴァン・ホア