公開 2024年09月06日  I 更新 2024年09月07日

1. ベトナム子会社が外国からの借入(ローン)を受ける時に注意点 実務経験から語る

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目次

9. 資本調達No.1

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ベトナムに進出して後、事業目的の実施、事業拡大、又は運転資金のために、資金の調達が必要です。日本の親会社又は関連会社、もしくは日本の金融機関等から資金を調達するケースが多いです。その外国からの借入を行う際において、注意する必要な法的な問題等を以下の通りにまとめています。

 

1. 一般注意事項

 

  (1)借入の目的について

    調達する借入額は、適法かつ正当な目的に資金を使用することが、基本的かつ重要な要件です(詳細は以下の第2及び第3項に述べます)。外国とのローン契約には、借入額の使用目的を明確に記載しつつ、その規定の通りに使用しなければなりません。ローン契約に基づいて借入を実行し、ベトナム側がすでに入金したものの、まだ資金を使用する必要がない場合、借入人は使っていない借入額をベトナムの金融機関や外国銀行支店に最長1ヶ月以内に預金することができます。

 

  (2)借入通貨

    外国からの借入額の通貨は外貨でなければなりません(例:米ドルまたは日本円)。制限された一定特別の場合のみに借入人がベトナムドンで外国から借入することができます。また、通常、借入額の返済も借入時の通貨で行われます。

 

  (3)外国契約者税

     外国貸付人に支払われる利息には、外国契約者税が5%発生します。一般的には両方当事者において、利息を含むすべての弁済・支払い額について、「控除なし」「税抜き」又は「相殺なし」での手取り額を決めます。そのため、外国貸付人に支払う金額(利息分)に乗せる外国契約者の5%は、借入人の負担で、外国貸付人に利息を支払う際に、代行して申告・納税を行います。

 

   (4)関係者間での借入の場合

     外国貸付人は、借入人の株主、社員(出資者)、所有者、または他の関連者(支配権を有する者等)である場合、借入人は、ベトナムの企業法に定める関連者間取引に関する内部承認手続等を行わなければなりません。

 

2. 長中期の借入(初回借入金実行日から最終元本返済日までの期間が1年以上の場合)に対する各種規定

   

 (1)借入の目的

以下に列挙する目的しか長中期の借入を実施することができません。

   借入人の投資プロジェクトの実施のため

   借入人の生産計画、事業計画、その他の事業に関するプロジェクトの実施のため

   借入人の既存借入の再構成

 

  (2) 借入額の上限

いくらでも借入額を調達できるわけではないです。以下に記載する制限を厳守する必要があります。

 会社の投資登録証明書(IRC)に登録した借入枠内(投資プロジェクトの総投資額と自己資本(出資分)の差額)。(※投資プロジェクト実施のための借入である場合に適用します)。

IRCに記載する借入枠を超過した額を調達する必要がある場合には、IRCの借入枠の変更を行わなければなりません。ただし、IRCの更新に時間がかかります。資金調達のスケジュールとの関係で、早く実施する必要がある場合には、IRCの更新期間中に、同時並行で短期の借入を実施して、その後短期の借入から長中期の借入に変更することも可能です。

 管轄機関に承認された外国からの借入額の使用計画に基づく資金調達の合計額内(借入人の生産計画、事業計画、その他の事業に関するプロジェクトの実施のための借入である場合に適用します)

③   既存の外国からの借入金の未払元本、未払利息、手数料の総額及び新規借入金の手数料の合計額内(借入人の既存借入の再構成である場合に適用します)

 

 (3)入金及び返済口座

  •      借入人が外国からの直接投資方式によって設立した企業(単独または合弁で新設した企業)の場合は、直接投資資本口座を、を通じて実施する必要があります。

         ※外国からの直接投資方式によって設立した企業は、会社に出資するために、必ず直接投資資本口座を開設する必要があります。外国からのローンもその口座を通じて行われます。

  •      借入人が外国からの直接投資方式によって設立した企業ではない(内資、もしくはM&Aによって外資になった企業)場合には、外国借入・返済口座を通じて実施する必要があります。

         ※借入人が外国からの直接投資方式によって設立した企業ではない場合は、直接投資資本口座を保有しませんので、外国からのローンを入金・弁済するために、使用する外国借入・返済口座を新たに作る必要があります。

 

 (4)ベトナム国家銀行(SBV)への借入登録

  •      中長期の借入はベトナム国家銀行(以下、「SBV」という)に登録する必要があります。具体的な登録先は、以下の通りになります。

           借入額が1,000万米ドル以上またはそれに相当する外貨額の場合はSBVの外貨管理局、

        ②  借入額が1,000万米ドル以下またはそれに相当する外貨額の場合は地方のSBV支店

  •      また、原則として、SBVに新規登録又は更新登録の手続きを完了しないと、借入人は借入金の引き出し、又は先に一部の返済(元本・利息等)を行うことができません。
  •      また、借入人は、短期借入と同様に、外国からの借入実施と返済状況を定期的に報告しなければなりません。
  •      SBVへの登録は、ローン契約を締結してから30日間以内に実施する必要があります。

 

3. 短期借入(初回借入金実行日から最終元本返済日までの期間が1年未満の場合)に対する各種規定

 

※短期借入の弁済期限が1年を超えた場合には、その延長をローン契約に反映させる必要があります。同時に、当該延長した契約を締結してから30日間以内に、短期の借入から長中期の借入に変更する形で、長中期の借入としてのSBVでの登録手続きが必要です。

 

  (1)借入の目的

以下に列挙する目的で、短期借入を行うことができます。

   借入人の既存借入の再構成

   現金での短期負債の支払い(国内の借入金の元本を除く)

 

  (2)借入額の上限

中長期の借入と違って、借入額の上限を定めていません。したがって、理論的には、短期借入の場合には、いくらでも調達することができます。しかし、借入額の使用目的と計画を銀行(SBVではなく、送金を担当する商業銀行)に説明・提出する必要があります。そのため、妥当ではない金額ですと、マネーロンダリングとの関係で送金の実施ができない可能性があります

 

   (3)入金及び返済口座

借入人が外国からの直接投資方式によって設立した企業の場合でも、借入人が外国からの直接投資方式によって設立した企業ではない場合でも、外国借入・返済口座を通じて借入を実施することができます。直接投資資本口座を保有している借入人が外国からの直接投資方式によって設立した企業であっても、外国借入・返済口座を開設して、短期のローンをその口座を通じて実施することを認められます。

 

  (4)SBCへの借入の登録

中長期の借入と違って、外国からの短期の借入は、SBVに登録する必要がありません。しかし、外国からの借入の実施及び返済状況を定期的に報告しなければなりません。月次報告書は、報告対象月の翌月5日までに、電子のポータルサイト「https://qlnh-sbv.cic.org.vn/qlnh/」報告書を送付するか、書面で郵送するかという二つの方法があります。電子のポータルサイトを通じて報告書を提出することができない場合(技術的なエラー等)には、必ず書面で、借入人の本社所在地の地方SBV支店に郵送する必要があります。

報告をしないことによって、罰金が発生するからです。

 

SBVは、資金の使用目的に対して厳しく管理する傾向があります。そのため、ローン契約を作成するときに、当該系焼きに定める借入の使用目的は、必ず上記に記載した目的に適合する必要があります。実際のローン契約を施行する時に、すでにSBVに提出・報告した使用計画や目的等を厳守しなければなりません。使用目的の変更がある場合には、借入の登録・報告事項の更新手続きを実施する必要があります。

 

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ベトナム カウバン省 写真家 弁護士 レ・ヴァン・ホア

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