公開 2024年09月05日  I 更新 2025年01月20日

ベトナムからの撤退:M&Aと法人消滅、最適な方法を選ぶためのポイント

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ベトナムからの撤退:M&Aと法人消滅、最適な方法を選ぶためのポイント


撤退・清算 公開 2024年09月05日  I 更新 2025年01月20日
目次

ベトナムからの撤退は、現地法人の消滅や事業の終了を伴う複雑なプロセスです。本記事では、撤退の主な方法として「M&Aによる撤退」と「法人消滅」を比較し、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。また、適切な撤退方法を選択するための重要なポイントや実務的な注意点を提示し、企業が最小限の負担で円滑に撤退を進めるためのガイドラインを提供します。

01 - 概要について

 

  •       ベトナムからの撤退は、現地会社(単独出資会社又は合弁会社を含めます)の消滅と、ベトナムでの事業(BCC契約による合弁事業やPPP方式による事業)の消滅という二つに分けられます。そのうちの事業撤退については、事業に関連する各種契約(BCC契約、PPP契約、合弁事業契約等)の終了・解除という方法で処理されるのが基本です(※ただし、BCC契約に基づく事業の場合には、BCC契約の管理事務所の閉鎖手続もあります)。
  •       撤退の理由はさまざまですが、主に以下の二つのケースが想定されます
    1.                           強制的な撤退

                     以下の場合を含まれています。

      •      事業活動期間、プロジェクトの活動期間(IRC上の期間)、企業の活動期間(ERC上の期間)が終了したが、延長することが認められない場合。
      •      法律違反により、会社に関する各種ライセンス(IRCまたはERC)が回収された場合。
      •      会社が 6 か月間継続してこの法律の規定による最低社員数を満たさず、企業形態の変更手続を行わないこと。

                 ii.   任意的な撤退

事業状況が継続的に悪化しているか、又は合弁会社とトラブルが発生していることを理由に、会社の判断で撤退を行う場合。

※本稿は、前者の現地会社の消滅及び後者の任意的な撤退について記載します。

 

02 - ベトナムから撤退する方法の概要

 

ベトナムから事業を撤退する時に、以下の図に記載する通りに、主には、①M&Aによる撤退と、②事業消滅による撤退という二つの方法があります。これに加えて、それぞれの方法に付随する方法も記載します。

 

 

03 - M&Aによる撤退と法人消滅による撤退の比較

 

 

M&Aによる撤退

清算

破産

メリット

  •       法人消滅に基づく負担(時間・費用等)がないこと
  •       法人消滅に伴う手続きと比べて、M&Aによる撤退の手続きが簡易、迅速(持分・株式の譲渡に伴る会社の出資者の変更手続きを実施すれば十分)であること
  •       会社に価値がある場合には、経済的な収益を得られること(買収での対価)
  •       利益関係者(労働者、債権者、債務者)への影響が少ないこと
  •       事業や法人を譲受ける候補者を見つけたり、交渉したりする負担がないこと
  •       債権者の意思と関係なく、会社の出資者(株主)の判断で、清算を行うことができること
  •       破産手続きと比較すれば、清算手続きの方が破産手続きよりも実施可能性が高い。
  •       支払い不能要件を満たせば、手続きを行うことにより、それ以上の経済的な負担がないこと

デメリット

  •      事業や法人を譲受ける候補者を見つける作業や、その譲渡に関する交渉、協議の負担があること(場合によって、適切な候補者が見つからない場合には、やむを得ず法人消滅による撤退の方法を選択しなければなりません)
  •      M&A契約を締結した後でも、責任(損害賠償責任や、第三者への責任)を引き続き負担する必要がある可能性があること(M&A契約の決め事次第)
  •       手続きへの対応、長時間の待機、高額な費用等の負担がある可能性が高いこと
  •       利益関係者(労働者、債権者、債務者)への影響があること(場合によって、利益関係者からのクレームや各種契約の終了に関連する紛争等が発生し、その対応も必要となります)
  •      ベトナムの特殊な破産制度上、うまく破産が実施できない可能性が高いこと
  •     利益関係者(労働者、債権者、債務者)への影響があること(場合によって、利益関係者からのクレームや各種契約の終了に関連する紛争等が発生し、その対応も必要となります)

 

上記の通りに、それそれの方法のメリットとデメリットがあります。会社の事業やその他の利益関係を十分に思考し、一番適切な方法を選択すべきです。間違った選択をすると、二重負担になってしまう可能性があります。

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