公開 2025年04月12日  I 更新 2025年04月20日

ベトナムにおける会社分割の完了時点とは?企業法2020と実務に基づく法的解釈と注意点

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ベトナムにおける会社分割の完了時点とは?企業法2020と実務に基づく法的解釈と注意点


コーポレート 公開 2025年04月12日  I 更新 2025年04月20日
目次

ベトナムで会社分割を検討中の日系企業必見!本記事では、会社分割の完了時点に関する法的解釈、企業法2020における条文分析、分割決定書の重要性、資産譲渡や責任分担における実務リスクを解説します。登録証明取得と義務移転の2条件が成立要件!分割手続を安全に進めるためのポイントを詳しく紹介。

会社分割(スピンオフ)は、ベトナム企業法20202020年企業法)に基づく代表的な企業再編手段の一つです。
しかし、実務上では「会社分割が法的に完了したと見なされる具体的な時点」について、法律上の明確な定義がないという問題が浮上しています。

この点は、特に以下のような場面において重大な影響を与える可能性があります:

  • 分割元企業と分割先企業間の資産・権利・義務の移転の有効性
  • 第三者との取引・契約の効力
  • 法的責任の所在と範囲

📌 このように、法的な「空白期間」が存在することで、リスクの所在が曖昧になることがあり、実務上の混乱を招く可能性があるため、慎重な対応が求められます。

 

01 - 現行法の規定と法的空白の存在

 

ベトナムの2020年企業法には、会社分割が「法的に完了した」と見なされる明確な時点についての具体的な規定が存在しておりません。

そのため、実務上では以下のような合理的な解釈に基づいて、会社分割の完了時期を判断する必要があります。

新設会社に対して企業登録証明書(ERC)が発行された時点

これにより、新会社の法人格が正式に成立したと解されます。

分割決定書に基づき、既存会社から新会社へ資産・権利・義務の移転が行われた時点

すなわち、分割元企業と新設会社の間で分割決議に従い、財務上および法的な承継が実行されたことが確認できる場合です。

この2つの条件がともに満たされた場合に、「会社分割は法的に完了した」とみなすのが実務上の一般的な理解となっています。しかしながら、これらはあくまでも推論的な対応に過ぎず、法令上の明文化がない点は実務リスクを残す要素となっています。

特に、資産譲渡の登記や契約関係の移行における法的効力の判断が不明確になる可能性があるため、企業としては注意が必要です。

 

02 - ベトナム2020年企業法(現行企業法)から読み取る法的解釈

 

会社分割の完了時点に関して、2020年企業法は明確な定義を設けていないものの、以下の2つの条文から立法者の意図を間接的に読み取ることが可能です。

1のポイント:第199条第4

「会社分割後、新設会社および分割元会社は、未払いの債務、労働契約、その他の財務上の義務について連帯して責任を負う。」

この規定は、新設会社が正式に登録された後でなければ、分割に伴う連帯責任が発生しないことを示唆しています。

したがって、企業登録証明書(ERC)が発行されていない段階では、会社分割による法的効果(連帯責任など)は未成立と解するのが自然です。

 

2のポイント:第199条第5

「新設会社は、会社分割決定に基づく権利および義務を当然に承継する。」

ここでの「当然に承継する」という文言は、新会社が正式に設立されたという法的前提があって初めて機能すると考えられます。

すなわち、法人格が成立していない状態では、権利義務の承継は無効または未発効と見なされる可能性があると解されます。

 

03 - 会社分割決定書の役割と法的効力

 

上記の通りに、2020年企業法では、会社分割に伴う権利義務の承継は「当然に発生する」と規定されています。しかし、実際にどの資産・権利・義務が、いつ、どのように承継されるかについての法的根拠は、会社分割決定書に依拠することになります。

会社分割決定書は、単なる社内決議ではなく、分割手続全体の法的・実務的な根拠文書であるため、慎重な作成が求められます。
以下の事項を明確に記載することが推奨されます:

  • 譲渡対象となる資産、権利および義務の詳細なリスト
    (例:不動産、契約、従業員、債務、訴訟中の案件 等)
  • 譲渡の効力発生日
    通常は、新設会社の企業登録証明書(ERC)発行日を基準としますが、これを明確に記載することで、第三者とのトラブルを未然に防ぐことができます。
  • 第三者との関係における債務整理や分担原則
    共同責任なのか、個別帰属するのかを整理して記載します。

 

04 - 実務上の注意点

 

会社分割を進める際には、以下のような実務上の留意点にも注意が必要です:

  • 会社分割決定の承認=手続完了とは見なさないこと
     決定の承認はあくまで社内の意思決定段階に過ぎず、対外的な法的効力は発生しません。
  • 新設会社が正式登録される前に、資産を先行して使用・譲渡することは避けるべきです。
     所有権移転、税務上の処理、第三者との取引に関するリスクが発生する可能性があります。
  • 複数の新会社を設立する場合には、それぞれに明確な分割決定書と資産・負債の割当書を作成する必要があります。
     権利義務の不明確化や将来的な紛争を防ぐため、書面による明確な記録が不可欠です。

 

 

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