公開 2026年01月29日  I 更新 2026年01月29日

ベトナムへの中古機械輸入実務ガイド 日本企業が押さえるべき法規制・通関リスク

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ベトナムへの中古機械輸入実務ガイド 日本企業が押さえるべき法規制・通関リスク


貿易 公開 2026年01月29日  I 更新 2026年01月29日
目次

本記事では、日本企業によるベトナムへの中古機械・設備・生産ラインの輸入について、代表的な活用ケース、年式・性能・環境基準などの法的条件、ならびに通関段階で実際によく発生するトラブル事例を踏まえ、実務上の留意点をわかりやすく解説しています。中古機械輸入を検討する企業にとって、事前に押さえておくべき実践的ガイドです。

ベトナムへの投資を検討する日本企業にとって、中古の産業機械や建設機械の輸入は、コスト削減や設備再利用の面で大きなビジネス機会となり得ます。日本国内で使用していた高品質な中古機械を活用することで、初期投資を抑えつつ生産ラインを迅速に立ち上げたり、環境負荷を軽減したりするメリットがあります。一方で、ベトナムでは中古機械の輸入に関して詳細な法規制が定められており、適切に対応しないと通関で問題が生じる可能性があります。本記事では、中古機械の輸入を計画する企業向けに、典型的なケース、法的条件、そして日本企業への留意点について、ベトナムの現行法に基づき解説します。

 

01 - 日本企業による中古機械輸入の主なケース  

 

まず、日本企業がどのような場面で中古機械をベトナムに輸入するか、代表的なケースを見てみます。

  • 工場の新設・拡張: 生産能力増強のため、日本の親会社や関連工場で使っていた中古の生産設備をベトナム現地法人に移設するケースがあります。これは、設備投資コストの削減と稼働までの時間短縮につながります。例えば、自動車部品メーカーが日本の工場で使っていた工作機械をベトナムの新ラインに転用する、といったケースです。
  • 高性能中古機械の再利用: 日本製の機械は耐久性が高く、製造から年数が経っていても性能が良好な場合があります。そのため「あえて中古を選択する」ことで、品質とコストのバランスを図る企業もあります。特に期間限定プロジェクトや試験生産などでは、新品購入より中古活用が経済的です。
  • 建設プロジェクトへの機材投入: 建設・インフラ企業が工事のために日本から中古建設機械(クレーン、ショベル等)を持ち込む場合があります。工事完了後に機材を持ち帰る場合は一時的な持込となりますが、現地に売却・残置する場合は恒久的な輸入となり、法規制の対象です。

以上のケースはいずれも、日本企業にとって中古機械活用の機会となりますが、同時にベトナム法の規制を正確に理解し遵守する必要があります。

 

02 - 中古機械輸入に関する主な法的条件

 

ベトナム政府は決定No.18/2019/QD-Ttg(及び決定No.28/2022/QD-TTgより一部改正)において、中古機械・設備及び生産ラインの輸入条件を詳しく定めています。主なポイントは以下のとおりです。

  • 製造年からの経過年数制限:中古機械の経過年数(製造年から輸入年まで)が原則10年以内であること。例えば2025年に輸入する場合、2015年製までの機械であれば年式要件を満たしますが、2014年製の機械は11年経過となり原則輸入不可となります。これは老朽化した機械の流入を防ぎ、省エネ・安全基準に適合しない設備が持ち込まれるのを避ける趣旨です。

年式例外(特定分野の機械)

一部の産業分野に使用される機械については、製造後1520年までの中古機械輸入が例外的に許容されています。対象となるのは、機械工学(工作機械)分野、木材加工・製材分野、製紙パルプ分野など、比較的耐用年数が長く環境への影響が少ない機械です。どの機械がこの例外に該当するかはHSコード(機械の種類)で定められており、該当機械の場合は製造20年以内まで輸入が可能です。ただし1520年クラスの中古機械を輸入する際も、後述の技術的基準や性能要件は満たす必要があります。

  • 安全・環境上不適切な機械の禁止:輸出国(機械の元の所在地)で廃棄処分とみなされた機械や、安全性・省エネ・環境保護の基準を満たさない機械は、たとえ年式が新しくても輸入が許可されません。例えば、重大な環境汚染の原因となる設備や、技術的に陳腐化した機械は規制対象外とされます。ベトナム政府は環境保護と先端技術導入の観点から、中古であっても一定の技術水準を要求しています。
  • 性能・効率に関する基準:輸入される中古機械・設備は、設計時の性能の少なくとも85%を有していること、かつエネルギーや原材料の消費率が設計時の15%増を超えないことが求められます。簡単に言えば、「まだ十分に使える効率的な機械」であることを証明する必要があります。性能が著しく劣化した機械やエネルギー浪費型の機械は認められません。
  • 技術基準への適合:中古機械はベトナムの定める国家技術規格(安全基準、省エネ基準、環境保護基準など)に適合していなければなりません。もしベトナムに該当する国家規格が無い場合でも、G7諸国又は韓国の国家規格に合致していることが条件となります。日本製機械であれば日本のJIS規格などが念頭に置かれますが、いずれにせよ国際的に認められた安全・環境基準を満たすことが必要です。
  • 生産ライン全体の要件:中古の生産ライン一式(複数の機械で構成されるライン)を輸入する場合には、追加の要件があります。輸入しようとする生産ラインが政府の定める移転禁止技術リストに含まれていないこと、そして同等のラインがOECD加盟国の少なくとも3つの生産拠点で稼働中であること、等が条件です。要するに、ベトナムで時代遅れと見なされる技術ラインは許されず、国際的にも実績のあるラインでなければなりません。

【整理ポイント】

  •     中古の機械・設備・技術ラインが上記のすべての条件・基準を満たしていることを証明するために、認定された検査機関において検査手続を実施し、鑑定書を取得する必要があります。

また、輸入目的に関する留意点として、ベトナムでは中古の機械・設備・技術ラインの輸入を、企業のベトナム国内における生産活動に直接使用する場合に限り認めています(決定No.18/2019/QD-TTg 4条第3項)。したがって、中古機械等を販売・賃貸などの商業目的で輸入する場合には、輸入が拒否される可能性が高いことにご注意ください。

 

 03 - よくある実務トラブル(中古機械輸入で実際によく起きる問題)

 

検査証明書の内容が曖昧で通関が止まるケー

中古機械の輸入において、検査証明書(鑑定書)は通関可否を左右する最重要書類です。しかし、実務上は、証明書の記載内容が抽象的であったり、法令上求められる要件を十分にカバーしていないため、税関で通関が停止されるケースが少なくありません。

特に問題となりやすいのは、

  •     機械の性能が「設計性能の85%以上」であることが明確に示されていない
  •     エネルギー・原材料消費率に関する評価が記載されていない
  •     国家技術基準(又はG7)への適合性が曖昧である

といった点です。
検査証明書は「形式的に取得すれば足りる」ものではなく、ベトナム税関が審査に耐え得る内容になっているかを事前に確認することが不可欠です。

 

年式証明が不十分で製造年が認められないケー

中古機械輸入では、製造年からの経過年数要件が厳格にチェックされます。そのため、製造年を証明する資料が不十分な場合、たとえ実際には要件を満たしていても、税関で輸入が認められない可能性があります。

実務上よく見られる問題としては、

  •     メーカーの仕様書やカタログのみで年式を説明しようとする
  •     シリアルナンバーと製造年の対応関係が明確でない
  •     中古売買契約書に製造年の記載がない

といったケースが挙げられます。
年式要件に関しては、メーカー発行の証明書や信頼性の高い検査機関による確認書類を準備することが重要です。

 

③ HSコードの解釈違いによるトラブ

中古機械の輸入では、HSコードの分類が法的要件の適用可否に直接影響します。
HSコードの解釈を誤ると、本来は例外的に輸入可能な機械であっても、規制対象として扱われてしまうリスクがあります。

例えば、

  •     実態は「工作機械」に該当するにもかかわらず、別の一般機械として申告してしまう
  •     生産ラインの一部機械を単体機械として申告し、ライン全体要件を満たさないと判断される

といった事例が見受けられます。
HSコードは単なる通関手続上の技術的事項ではなく、輸入可否・年式例外の適用可否を左右する重要要素であるため、事前に専門家の確認を受けることが望ましいといえます。

 

「一時輸入」のつもりが「恒久輸入」と判断されたケー

建設工事やプロジェクト用途で中古機械を持ち込む場合、「一時的に使用して後で持ち帰る」ことを前提にしている企業も多くあります。しかし、実務上は、税関から恒久輸入と判断されるケースが少なくありません。

例えば、

  •     一時輸入に関する申告や手続を行っていない
  •     工事終了後の再輸出計画が明確に示されていない
  •      機械が長期間ベトナム国内に留置されている

といった事情がある場合、当初の意図に反して恒久輸入と扱われ、中古機械輸入規制が全面的に適用されるリスクがあります。一時輸入を想定する場合には、契約書・輸送計画・再輸出スケジュールを含めた一貫した説明ができる体制を整えることが不可欠です。

 

04 - 日本企業への重要な留意点

 

最後に、ベトナムへ中古機械を輸入する際に日本企業が留意すべきポイントをまとめます。

  • 機械選定と書類準備の徹底:輸入予定の機械が年式・性能・環境基準を満たすことを事前に確認することが不可欠です。可能であれば、日本国内で機械の点検整備を行い、メーカーから必要情報を入手してください。その上で、前述のメーカー証明書又は検査機関の鑑定書を確実に取得しましょう。書類は漏れなく準備し、社内及び輸送業者とも共有しておくことで、通関時のトラブルを防げます。
  • 信頼できる検査機関との連携:指定検査機関の鑑定書は中古機械輸入の成否を握る重要書類です。日本企業の場合、日本国内の認定検査会社に依頼して出荷前に鑑定を行うケースもあります。実績ある検査機関を選び、機械の検査・証明取得を早めに進めましょう。検査機関から提示される改善点(もしあれば)には迅速に対応し、機械の状態を基準適合レベルに維持することも大切です。
  • 通関・物流面での注意:中古機械は大型で複雑な機械も多く、輸送中の損傷や汚損が起きると通関後の稼働に支障を来します。梱包・輸送に万全を期し、必要に応じて専門の物流業者を活用してください。また、ベトナムの港湾での通関手続は時間を要することもあるため、輸入スケジュールには余裕を持たせることをお勧めします。税関から追加書類提出や検査指示が出た際には迅速に対応できるよう現地スタッフや代理店と連絡を密にしましょう。
  • 不適合時のリスク対策:万一、輸入した機械が基準不適合と判断された場合、税関で搬入拒否となり機械を国外に再輸出せざるを得ないリスクがあります。そうなると機械代金や輸送費用が無駄になるだけでなく、プロジェクト全体のスケジュールにも影響が出ます。リスクヘッジとして、契約条件に不適合時の返品条項を入れる、代替機械の手配計画を用意する、などの対策も検討してください。何よりも事前のチェックと専門家の助言によってリスク自体を低減することが望ましいです。

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