公開 2025年11月12日  I 更新 2025年11月12日

ベトナム土地法が大改正!工業団地・製造業企業が知るべき3つの重要ポイント

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ベトナム土地法が大改正!工業団地・製造業企業が知るべき3つの重要ポイント


不動産 公開 2025年11月12日  I 更新 2025年11月12日
目次

2024年施行のベトナム土地法改正により、製造業企業の地代・土地利用・再賃貸制度が大きく変わります。最新の実務影響を解説します。

新しい土地法は2024118日に国会で可決され、202481日より施行されています。今回の改正は、土地利用・地価算定・税務および投資手続きに関する大幅な見直しを含み、特にベトナム国内で製造業を営む企業に直接的な影響を及ぼす内容となっています。

 

01 - 地価および地代算定方法の変更

 

1.1. 改正のポイン

  •     これまで存在していた「土地価格枠制度」が全面的に廃止されました。
  •     各省が毎年策定する「土地価格表」が基準となり、市場実勢に近い価格で算定される仕組みに変更されます。
  •  新しい土地価格表は以下の基準をもとに計算されます。
    •     土地使用料・賃料(特に工業団地内の土地賃貸料
    •     土地譲渡・転用時の税金算定

これにより、今後の地価はより現実的な水準で決定される一方、企業にとってはコスト上昇のリスクが高まる可能性があります。

企業への影

区分

改正前

改正後の影響

一括払いで土地を賃借

財務負担はほとんど変わらず。すでに国への支払い完了済み。

税額の微調整はあるが影響は軽微。

年払いで土地を賃借

国が発行する価格表により賃料が毎年変動。

2025年以降、地代上昇リスクが高まる見込み。

 

1.2. 解説と実務上の留意

今回の改正により、特に年払い方式で工業団地の土地を借りている製造企業は、2025年以降に地代上昇の影響を受ける可能性が高まります。
そのため、以下の点に注意する必要があります。

 既存リース契約の再確認
契約に「価格改定条項」が含まれている場合、地方当局の新しい土地価格表に基づいて再計算が行われる可能性があります。

 長期契約の見直し
長期的な操業を予定している企業は、一括払い(前払い方式)を検討することで、将来的なコスト上昇リスクを抑えることができます。

 新規投資時の慎重な土地評価
投資検討段階で、現行および将来予想される地価動向を踏まえ、キャッシュフロー計画に余裕を持たせることが重要です。

 

 

02 - 地代支払方式と契約リスクに関する注意点

 

2.1. ホーチミン市 工業団地Aの実

日系企業X社は、工業団地Aの開発会社から土地を一括払いで賃借していました。しかし、開発会社自身は年払い契約で国に地代を支払う形となっていました。

2024年末、土地価格表の改定により地代が大幅に上昇し、当局は開発会社に対して追徴課税を発生させました。開発会社がこの追徴分を支払えなかった場合、強制徴収やプロジェクト取消しのリスクが生じることになります。

結果として、

  •     工業団地Aが他の投資家に引き継がれる可能性がある、
  •     または、X社を含む賃借企業に対して国家が直接地代追徴を行う可能性も考えられます。

 

2.2. 企業が取るべき対応

今回の改正を踏まえ、製造業を含む企業は以下の点を必ず確認する必要があります。

 契約上の地代支払方式と土地権限の確認
契約書に明記されている「地代の支払方法」「土地使用権の所在」を必ず確認します。特にサブリース(再賃貸)の場合、一次契約の条件変更が二次契約にも影響するリスクがあります。

 年払い契約の見直しとリスク管理
開発会社が国に対して年払い契約で支払っている場合、地価改定に伴う地代上昇リスクを考慮し、再交渉や契約条件の修正を検討します。

 土地価格表改定のモニタリング
土地価格表は毎年1月頃に発表される予定です。価格改定の動向を定期的に確認し、コストシミュレーションを行うことが重要です。

 契約修正項(地代変動対応条項)の追加
将来的な改定に備え、契約書に「地代変動時の対応条項」を明記することで、
不測のコスト上昇リスクを最小限に抑えることができます。

 

2.3. 実務的アドバイ

ベトナムでは、開発会社・工業団地管理会社・国の3者関係が複雑に絡み合っており、一次契約と二次契約の不整合が原因でトラブルに発展する事例が増えています。

したがって、

  •     契約締結前に土地使用権のスキームを法的に確認すること、
  •     改正後の税務・地価制度に即した条件にアップデートすることが不可欠です。

 

 

弁護士法人ベトホ(BETOHO LAWFIRM)では、ハノイ周辺、ホーチミン市やビンズオン省などの工業団地に進出する日系企業向けに、契約レビュー・地代リスク分析・再交渉支援を行っております。

 

 

03 - 未利用土地への行政措置と投資計画遅延リスク

 

ベトナムの新しい土地法(第81条第8項)では、国や地方政府から土地を割当・賃貸・譲渡許可されたにもかかわらず、
以下のいずれかに該当する場合、行政的な措置を受ける可能性があると規定されています。

  •     12か月以上連続して土地を未利用の場合
  •     投資計画に定めた進捗が24か月以上遅延している場合

 

3.1. 適用される措置の内

 最長24か月まで延長を申請可能
 ただし延長申請には理由の説明および当局の承認が必要です。

 延長期間中は追加の土地使用料・賃料を支払う義務
 追加金額は以下の式で算定されます:
 延長面積 × 当時の土地価格表 × 2 × 延長期間(月) ÷ 12
 ※15日以上は1か月として計算します。

 延長期間満了後も未利用の場合、国は無償で土地を回収可能
また、土地および土地上の資産補償は行われません

この措置は特に工業団地内での投資プロジェクトに大きな影響を与える可能性があります。

 

3.2. 行政の動

国家および各工業団地管理委員会は、現在未利用土地の一斉調査を実施しています。
とくに以下の案件が重点調査対象とされています。

  •     すでに賃貸契約を締結済みだが、建設が着手されていない区画
  •     許可済みでありながら投資が停止しているプロジェクト

当局は、開発会社および賃借企業に対して報告書の提出を求め、具体的な土地利用計画の提示を指示しています。

 

3.3. 実務上の留意

 賃貸契約の土地権限・利用開始時期の再確認
土地利用開始の遅延や建設計画の未着手は、行政処分(回収・罰金)のリスクを伴います。

 工業団地内の土地でも報告義務あり
開発会社を通じて、テナント企業(製造業を含む)にも利用状況報告が求められています。

 早期の対応が重要
進捗が遅れている場合は、投資計画の見直し・報告書提出・延長申請を早期に行うことで、行政処分を回避できる可能性があります。

 

 

弁護士法人ベトホ(BETOHO LAWFIRM)では、ホーチミンや北部工業団地に進出する日系企業向けに、土地使用契約の法務チェック・延長申請支援・行政対応サポートを行っております。

 

04 - 外国投資企業の土地使用権拡大と再賃貸制度の緩和

 

4.1. 土地使用権の取得および譲渡が可能な区域の拡大

従来、土地使用権の取得および譲渡が可能な区域は工業団地(Industrial Zone)に限定されていましたが、今回の改正によりその対象範囲が拡大され、産業クラスター(Industrial Clusterハイテクパーク(Hi-Tech Park)にも適用されるようになりました。

これにより、外国投資企業はより柔軟に工場・倉庫・設備投資を行うことが可能になります。

 

4.2. 再賃貸に関する制度と企業の権

従前の制度ですが、企業が自社で保有する土地・建物のうち、未使用部分を第三者に再賃貸することができます。

  •     例:倉庫の一部、未使用フロア、設備未稼働区画など。
  •    これにより、企業は土地資産の有効活用が可能となり、投資回収やキャッシュフローの改善につなげることができます。

ただし、再賃貸を行う際は以下の要件に留意する必要があります。

 

不動産業登録の要

小規模または副次的な賃貸活動であれば、不動産取引法上の「不動産業登録」義務は不要とされています。

以下の条件を満たす場合、登録を省略できます:

  •     企業の主たる事業が製造業であること。
  •     再賃貸が副次的な収益活動に留まること。

しかし、再賃貸を恒常的に行う場合は、不動産業または倉庫業の登録が必要となる場合があります。

 

税務上の注意

再賃貸による収入を計上する場合、請求書(インボイス)の発行が必須です。
ただし、不動産賃貸業を正式に登録していない企業は、インボイス発行が認められないケースがあります。

このため、実務上は次の対応が必要になります。

  •     不動産賃貸業または倉庫業の登録を追加する。
  •     税務署への報告を通じて、再賃貸収益を適切に申告する。

 

契約上の留意

実際に譲渡や転貸を行う際には、工業団地開発会社との土地賃貸契約書の内容を必ず確認しなければなりません。
契約によっては、

  •    「譲渡禁止条項」
  •    「譲渡条件付き条項」
    が設定されている場合があり、違反すると契約違反や罰則の対象となります。

 

 

弁護士法人ベトホ(BETOHO LAWFIRM)では、外国投資企業向けに土地使用権の譲渡・再賃貸に関する法務チェック、契約交渉、税務対応を一括でサポートしております。

 

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