ベトナムの労働組合経費に関する2026年の新規定
企業が確認すべき算定基礎、納付期限、免除・軽減・納付停止
政令105/2026/ND-CPは、通常の労働組合経費の納付率である2%を変更するものではありません。一方で、納付義務者、納付期限、納付遅延と未納の判定、ならびに免除、軽減および納付停止の条件が、従来より明確に定められました。本稿では、企業が実務上優先して確認すべき事項を整理します。
2026年3月31日、ベトナム政府は、労働組合財政に関する労働組合法の一部条項を詳細に規定し、その施行を案内する政令105/2026/ND-CPを公布しました。同政令は2026年5月16日から施行され、政令191/2013/ND-CPに代わるものです。
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01 - どの企業に納付義務があり、金額はどのように算定されますか |
労働組合費と労働組合経費の違い
まず、「労働組合費」と「労働組合経費」を区別する必要があります。労働組合費は、ベトナム労働組合規約に基づき組合員が納付するものです。これに対し、労働組合経費は、法令上の対象となる使用者が納付するものです。本稿では、企業その他の使用者が負担する労働組合経費のみを取り扱います。
納付義務者
政令105/2026/ND-CPに基づき、労働組合経費の納付対象には、次の者が含まれます。
- 企業
- 給与の全額を国家予算から受けていない公立事業単位
- 協同組合および協同組合連合
- 法令に基づき労働者を使用するその他の機関、組織および単位
- ベトナムにおける労働組合の組織・活動に関連する外国機関および国際機関、ならびにベトナム人労働者を使用する事業協力契約における外国側の運営事務所
有限責任会社、株式会社、個人企業および外資系企業についても、法令上の適用対象に該当し、強制社会保険料の算定基礎となる賃金基金が発生する場合には、引き続き納付義務が生じます。
基礎労働組合が未設立でも納付義務は生じます
労働組合経費の納付義務は、企業に基礎労働組合が設立されているかどうかによって決まるものではありません。そのため、新設企業、従業員数が少ない企業、または基礎労働組合が未設立の外資系企業であっても、納付対象に該当し、強制社会保険料の算定基礎となる賃金基金が発生する場合には、納付義務を履行する必要があります。
納付率と算定基礎
労働組合経費は、次の算式により算定します。
強制社会保険料の算定基礎となる賃金基金 × 2%
算定基礎は、従業員が実際に受け取るすべての収入ではなく、強制社会保険料の算定基礎となる賃金基金です。したがって、社会保険料の算定基礎に含まれない手当、福利厚生その他の支給額が、当然に労働組合経費の算定基礎へ含まれるわけではありません。
例えば、ある月の強制社会保険料の算定基礎となる賃金基金が10億VNDである場合、その月に発生する労働組合経費は2,000万VNDとなります。企業その他の対象単位について、労働組合経費は当該単位の財源から支出し、法令に従って当期の生産、事業またはサービス活動の費用として計上されます。
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02 - 納付期限と「納付遅延」「未納」の判定 |
納付方法と期限
- 原則として、強制社会保険料の納付時期と同時に、毎月1回納付します。
- 農業、林業、漁業または製塩業を営み、生産・事業周期に応じて給与を支払う組織・企業は、労働組合組織への登録に基づき、毎月1回または3か月に1回納付できます。
最終的な納付期限は、毎月納付する場合は翌月末日、3か月ごとに納付する場合は当該納付周期の直後の月の末日です。例えば、毎月納付する方法を採用する企業について、2026年6月分の労働組合経費は、遅くとも2026年7月31日までに納付する必要があります。企業は、労働組合からの通知や督促を待つのではなく、この期限を定期的なコンプライアンス・カレンダーへ組み込むことが適切です。
納付遅延と未納の違い
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区分 |
判定方法 |
実務上の留意点 |
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納付遅延 |
法定の納付期限後も、納付すべき金額の全部または一部を納付していない場合。 |
期限の経過により発生し、企業が通知を受領したかどうかには左右されません。 |
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未納 |
労働組合経費を控除・納付しない場合、または納付期限から60日以内に、対象金額・対象人数の全部もしくは一部について納付しない場合。 |
60日という期間は、納付を遅らせることが認められる猶予期間ではありません。60日前であっても、すでに納付遅延の状態です。 |
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03 - 免除、軽減または納付停止が認められるのはどのような場合ですか |
政令105/2026/ND-CPは、性質の異なる三つの支援制度を定めています。企業は、権限を有する機関の決定または承認文書がない限り、これらを自ら適用することはできません。
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制度 |
適用場面 |
上限・期間 |
主な効果 |
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免除 |
法定要件を満たす解散または破産 |
決定に基づき未納額を免除 |
自動的には免除されません。 |
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軽減 |
納付停止期間後も、基準以上の人員削減を継続 |
最大20%、最長6か月 |
終了後は通常の水準で納付します。 |
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納付停止 |
重大な困難があり、具体的要件を満たす場合 |
最長12か月 |
終了後、納付を再開し、停止期間分も追納します。 |
未納の労働組合経費の免除
- 解散の場合:労働組合組織が、労働組合経費の債務を含む債務処理案へ参加する場合、企業、協同組合または協同組合連合は免除を検討されることがあります。
- 破産の場合:労働組合組織が当該単位について破産手続の適用を申し立てる場合、免除を検討されることがあります。
免除は、権限分担に従い、ベトナム労働総同盟または省級労働連盟が検討し、決定します。企業に解散決定があること、または破産手続が開始されたことのみをもって、債務が当然に免除されるものではありません。
人員削減を継続する企業に対する納付額の軽減
企業が軽減を検討されるのは、納付停止期間が終了した後も、相当程度の人員削減を継続しなければならない場合です。削減基準は、従業員規模に応じて次のとおりです。
- 従業員200人未満:現有従業員数の30%以上、または30人以上を引き続き削減する場合
- 従業員200人以上1,000人以下:50人以上を引き続き削減する場合
- 従業員1,000人超:100人以上を引き続き削減する場合
条件を確認する際には、政令の規定に従い、人員削減日から3か月以内の新規採用状況もあわせて照合する必要があります。軽減率は納付すべき労働組合経費の20%が上限で、月単位で計算され、最長6か月です。具体的な軽減率は、提出書類、実際の状況および労働組合財政の均衡能力にも左右されます。
重大な困難がある場合の納付停止
企業は、組織・技術の変更、経済危機または景気後退、経済再編に伴う国家政策の実施、あるいは自然災害、火災、感染症または不作により困難に直面した場合、納付停止を検討されることがあります。さらに、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 30日以上、生産・事業を停止し、従業員の雇用を確保できないこと。加えて、生産・事業停止前の在籍従業員総数のうち、強制社会保険の対象であり、退職・遺族基金への拠出停止申請のため一時休業する従業員が50%以上を占めること。
- 自然災害、火災、感染症または不作により、土地を除く総資産価値の50%を超える損害を受けたこと。
納付停止期間は月単位で算定し、最長12か月です。停止期間の終了後、企業は納付を再開するとともに、停止期間中の労働組合経費を追納しなければなりません。追納期限は、停止終了月の翌月末日です。その後も軽減条件を満たす場合には、別途、軽減申請手続を行う必要があります。軽減制度が適用されても、停止期間分の追納義務が消滅するものではありません。
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04 - 2026年以降、企業が実施すべき確認事項 |
第一に、基礎労働組合が未設立であった期間を含め、過年度から現在までに納付した労働組合経費と未納額を確認します。
第二に、従業員一覧、強制社会保険料の算定基礎となる賃金基金、給与台帳および労働組合経費の納付額を毎月照合します。振込総額のみを確認するだけでは十分ではありません。
第三に、労働組合経費について独立したコンプライアンス・カレンダーを作成し、担当者、数値の確認時点および送金期限を明確にします。労働組合からの督促通知のみに依存しない運用が必要です。
第四に、経営上の困難が生じた場合には、納付停止または軽減の条件を早期に検討し、事由が発生した時点から資料を準備します。決定または承認文書を得る前に、企業が独自に免除、軽減または納付停止を適用することはできません。
第五に、企業買収、合併、持分譲渡、解散または破産の場面では、労働組合経費の納付状況を法務・財務デューデリジェンスの対象に含めます。実務上、見落とされやすい義務であるためです。
まとめ
政令105/2026/ND-CPは、通常の労働組合経費の納付率である2%を変更していません。一方で、納付期限、納付遅延と未納を区別する基準、免除・軽減・納付停止の適用条件、および申請書類の処理手続が明確になりました。企業は、従業員、賃金および社会保険に関するデータを主体的に管理するとともに、権限を有する機関の文書がない段階で支援制度を独自に適用しないことが重要です。