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1. ベトナムでの契約書は、どのように作成されたのか?
日系企業を含む大手のベトナムでの企業とそうではない企業の契約作成の流れは、以下の通りに、若干異なっています。
上記の流れで作成した契約書は、どのような問題があるのかについて、見ていきましょう。以下の通りの問題点が感じられます。
① 大手の企業(法務部がある)又は契約額が大きい又は重要な契約(財産の譲渡契約、EPC契約、合弁契約、事業協力契約、代理店契約等)の場合は、以下の問題があります。
- 契約書が長すぎます
法務部専門の方や弁護士目線ですと、法律にすでに定めている内容でも、そうではない内容でも、全て契約に盛り込むのがよくあるパターンです。。個人的には、そのような書き方ですと、契約のボリュームが増えてしまい、契約の読者に困らせる可能性があります。
“コメント”
それを解決するために、以下の二つの対策を考えられます。
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- 本来契約に記載する必要ではない条項を削除すること(法律によって規定された内容等)。ただし、前提として、その法律の存在やその趣旨を両方当事者が意識する必要があります。
- 本来契約に定めるべきではない内容もそのまま契約に入れ込むが、契約内容の全体について、両者の把握や認識を十分に確認できるように、契約の説明会や協議の立ち合いを作って、適切に実施すること
- ベトナムにない制度の導入
外資系企業の法務担当者(外国人)や、海外に留学した弁護士のアドバイスをもとに契約を作成する場合には、ベトナムにない制度を導入することが少なくないです。言葉の分かりにくさは、もちろん、その条項の内容自体がベトナムの法律に馴染みがない場合があります。もちろん両方当事者で合意ができれば、そのまま実施することができます。しかし、万が一紛争等になった際に、裁判所は、その条文の効力を認めない可能性があります。
“コメント”
ただし、契約の紛争解決の管轄機関は、裁判所ではなく、契約の自由原則を十分に理解できる仲裁である場合には、そういった問題を起こらない可能性があります。
② 中小企業(法務部がない)又は契約額が小さい又は重要ではない契約(日々の購買契約、雇用契約、サービス契約等)の場合には、以下の通りにもっとたくさんの問題を見受けています。
- 契約が無効になる可能性があること(署名者の権限や、会社の事業内容等)
- 本来あるべき条項が入っていないこと
- 取引等に関連のない条項があること
- 法律違反の条項があること
- 契約を履行する際に、円滑に行うことができないこと(会計上の処理、義務の不明等)
2. 日越間の契約書の違いは?
日本人専門家が作成した契約をレビューした経験の中で、一番感じているのは、以下の通りになります。
① ベトナム人に馴染みのない条文があること
期限の利益に関する条項、反社会勢力、人権保護等に関する条項を入れる契約書が少なくないです。ベトナムでは、そういった条文に該当する制度がありませんので、文脈だけでは理解できないことが多いです。それらの条文を生み出す日本での経緯や背景があるかと思います。しかし、ベトナムでは、似たような背景がないため、ベトナムだけで履行する契約の場合は、できればそのような条文を削除することを望ましいです。
② 文章の構成が複雑すぎること
日本の契約条文が長い過ぎる場合が良く見受けています。その文書を翻訳だけでも工夫する必要がありますし、場合によって原文の意味を十分に伝われない可能性もあります。
③ 条文を作る背景があるため、それを理解できなければ、内容を伝われないこと
当然であることながら、契約書は、当事者間の約束であり、当事者間の合意に基づき作成したものです。そのため、原則的には当事者間だけ理解できれば十分です。しかしながら、万が一紛争等になったら、その契約書を裁判所や仲裁に開示する必要があります。そうなった場合には、文書を作成する背景まで説明しないと、文書の意味を解釈することができません。ただ、紛争になった時に、契約を作成した人間を呼び出すことができるかどうかは、大きな問題です。
そもそも紛争にならない場合でも、後任者や他の関係者が見ても意味が通じる必要がありますので、契約の透明性、具体的性を確保すべきだと考えられます。
ベトナム ラスカイ省 写真家 弁護士 レ・ヴァン・ホア