公開 2024年08月29日  I 更新 2025年03月08日

外国投資家向けガイド:ベトナム進出の外資規制

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外国投資家向けガイド:ベトナム進出の外資規制


投資・進出 公開 2024年08月29日  I 更新 2025年03月08日
目次

ベトナム進出を目指す日本投資家に向けて、投資規制や事業内容の制限、外資企業に求められる要件を解説します。実務経験豊富なベトナム人弁護士が、国際条約および国内法の要件をわかりやすく整理しました。

ベトナム国内企業を保護し、ベトナム全体の経済発展計画等を管理するなどの理由により、ベトナム政府は、日本を含む外国人の投資家・事業者を含む外国投資家に対し、ベトナムへの投資について制限を設けています。例えば、全ての外国からのベトナムへの直接投資プロジェクトおよび一部の外国からベトナムへの間接投資プロジェクトについて、投資法の規定に従い事前の投資許可(投資登録証明書またはM&Aの承認)を取得する必要があります。事前の投資許可を取得する際に、ベトナム政府は、外国の投資家・事業者の個別申請書類に対する様々な条件を確認し、個別に判断・許可を行います。 また、ベトナム国内で統一的な判断がなされるのではなく、ハノイ、ホーチミン、ダナン等の各地方によって、判断基準が異なることがあるため、法律の規定のみならず、各地方のローカルルールや、規制等も確認する必要があります。

 

01 - ベトナム政府が外国人による投資を制限する目的

 

ベトナムは、社会主義指向市場経済という経済モデルを採用しています。この経済モデルにより、ベトナム政府は、経済の発展を市場に任せるものの、他方で、国が目指す経済目的を達成できるように、経済発展に関する方針を決め、包括的に管理・指導等を行い、一部の計画経済を維持しています。そのため、国内外問わず、ベトナム国内の経済に影響を与える可能性のある投資活動に対して、投資を許可する前にいったんベトナム政府による審査を受ける必要があります。主な審査項目は、以下のものが挙げられます。

§  国が目指す経済発展目標、投資の事業・分野の発展方針・企画が適切か

§  安寧・国防を保護することができるか

§  持続可能な発展・環境保護ができるか

§  国が提供する資産(特に土地使用権)の使用が効率的であり、使用目的が妥当か

 また、ベトナム政府は、ベトナム経済、社会への悪影響(環境汚染、価格移転税制、時代遅れのテクノロジーの導入などの問題)を防ぎ、ベトナム企業を保護するために、外国投資家への制限を設けています。

 

02 - ベトナムへの投資の事業目的の選定

 

ベトナム進出を決定する際に、最初に決めなければならないのは、どのような事業に投資するか、その目的は何かという点です。つまり、貴社は、ベトナムで何をやりたいのか、どんな事業を実施したいのかについて、十分に検討しなければなりません。事業を検討した後、以下の外資規制等に該当しないかについて確認が必要になります。

 

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投資・経営が禁止される事業・分野に該当するかどうか

 

現行投資法(No. 61/2020/QH14)に定める投資・経営禁止事業・分野は、以下のとおりですが、実際に、日系企業の皆様が検討すべきなのは下記②と⑧が中心になります。

   現行投資法61/2020/QH14別表1に記載される麻薬関連事業

   投資法61/2020/QH14別表2に記載される各種化学物質、鉱物関連事業

   投資法61/2020/QH14に記載される、絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の付録1に記載される自然に由来する各種野生植物、動物の標本に関する事業、および投資法61/2020/QH14の付録3に記載されるグループⅠにおける自然に由来する絶滅のおそれのある貴重で希少な野生動植物、水産物の標本の関連事業

   売春事業

   人身売買、生体の組織・死体・身体の一部・胎児の売買

   人の無性生殖に関連する事業活動

   爆竹販売に関する事業

   債権回収事業

JETRO翻訳文の引用)

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条件付投資・経営事業・分野に該当するかどうか

 

現行投資法61/2020/QH14の一部条項の施行指導を定める政令31/2021/ND-CPで条件付投資・経営事業・分野リストを規定されます。以下のJETROが翻訳したものが参考になります。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/vn/invest_02/pdfs/vn7A010_jokentsukikeieitoushi_yugu.pdf  

 

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事業のCPCCertificate of Professional Competence)コードとVSICVietnam Standard Industrial Classification)コードの確認

 

CPCコードは、国際連合が事業種別に事業に対し番号を定めているコードです。外国投資家が、ベトナムでの拠点を設立する際に、事業コードをIRC(投資登録証明書)に記載する必要があります。

CPCコードは、以下の世界貿易機関(WTO)センターで確認することができます。

https://trungtamwto.vn/file/20908/cpc-verson-2.1.pdf

また、ベトナムは、WTOに加盟した後に、サービス分野での外国投資家に対する一定の市場開放を行うためのコミットメント(以下、「WTOコミットメント」という)を締結し、そのWTOコミットメントにサービス業のCPCコードを列挙し、進出条件も規定されます。外国投資家は、当該条件を確認・把握する必要があります。

 

VSICコードは、ベトナム政府が事業種別に定めているベトナム国内の経済セクターのコードです。ベトナム国内企業と外資企業が、法人を設立する時に取得しなければならないERC(事業登録証明書)の手続に必要となります。当該コードは、会社の事業(活動目的)として、会社の情報を登録、公開する事業登録ポータルサイトに搭載されます。VSICコードは、決定文書No.27/2018/QĐ-TTgに定められています。

 

CPCコードとVSICコードを決定して、はじめて、ベトナム進出に関する各種手続きの準備を開始することができます。

CPCコードについては、ベトナムが加盟した国際条約にも記載があります。日本の投資家の場合は、①WTOコミットメントおよび②日越投資協定を参考にすることができます。それらの協定に記載されていない(未開放の事業)事業については、管轄当局機関の個別判断に基づく承認を得る必要があります(例:リネンサプライのサービス)。個別の事業についてはお問い合わせください。

 

03 - 外資企業への制限の種類

 

 外国投資家への制限(条件)の種類は、以下のものが含まれています。

§  現地法人における定款資本金の保有率に関する制限

§  投資形態に関する制限

§  事業活動内容の範囲に関する制限

§  投資家の能力(財務的な能力)、経験等の条件

§  その他ベトナムの法律により求められる条件

 

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現地法人における定款資本金の保有率に関する制限

 

現地法人における定款資本金の保有率については、大きく4つのパターンに分けられます。

①   100%外資資本を認める(例:IT事業、コンサルティング、不動産事業、不動産サービス業)

②    外資企業の最大保有割合が49%まで(国内海路の運航サービス、鉄道サービス、エンターテインメントサービス等)

③    合弁企業における外資企業の保有割合が51%以下(農業、林業サービス等)

④    現地法人との合弁での出資(下限はない)が必要(広告業等)

 


 

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投資形態に関する制限

 

投資の形態については、現行投資法により、①現地拠点の設立、②追加出資・持分購入・株式購入による投資、③投資プロジェクトの実施、④BCC契約に基づく投資、および⑤政府が定める特別の投資形態という5つの投資形態が定められています。そのうち、外国投資家が多く選択する投資形態は、①現地拠点の設立および②追加出資・持分購入・株式購入による投資です。

 の現地拠点の設立の投資形態については、(ア)現地法人の設立、(イ)支店の設置、及び(ウ)駐在員事務所の設置という3つの選択があります。外国投資家がベトナムで行う予定の事業によって、(ア)(イ)(ウ)のいずれかを選択することができます。そのうち、(イ)支店の設置は、非常に限定された事業にのみ許可されます。

 また、現地法人の設立ができない場合において、④BCC契約に基づく投資を選択するというパターンもよく見られます。

上記のどの投資形態を選択した場合においても、市場へのアクセス条件を満たす必要があります。

 

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事業活動内容の範囲に関する制限

 

事業活動内容の範囲に関する制限については、専門分野の特別法において定められています。例えば貨物レンタル事業は、外国投資家の進出を認めているものの、ベトナムローカル企業とは異なり、外国投資家、外資系企業が実施することができる事業範囲が非常に制限されています。

事業活動内容の範囲は、地理的な活動範囲も含まれます。外国投資家、外資系企業は、国防や治安維持に関係する地域には、原則的に進出することができません。

 

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投資家の能力(財務的な能力)、経験等の条件

 

外国投資家の能力(財務的な能力)、経験等に関する条件は、専門分野を規制する特別法に定める条件の他、投資登録証明書(または、投資登録証明書と同様な証明書)を取得する際に、当局の判断基準として、外国投資家の財務的な能力の証明(外国投資家の直近 2 年間分の監査済財務諸表、または財務能力説明文書、若しくは親会社やその他金融機関の財務保証に関する誓約文書等)や、ベトナムで実施予定の事業に関する外国での実績や経験の証明書類を提出する必要があります。

 

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その他ベトナムの法律により求められる条件

 

その他、ベトナム法上で求められる条件については、専門分野を規制する特別法や、ベトナムで実施予定の事業を管理する管轄機関が発行する政令、通達等に個別に定められています。求められる条件として、主に以下のものがあります。

§  個別ライセンスの取得

§  最低の定款資本金、法定資本金

§  企業の管理者・専門家・技術者に対する資格

§  設備、インフラの整備

§  その他の条件

【注】

※上記に記述する内容は、公開会社の証券取引を規定する証券法に基づく規制に服しない会社を前提としています。

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