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01 - 日本人投資家の皆様:資産保全と成長のために海外進出を考えてみてはいかがですか? |
【国内にとどまらず、海外で資産を守り、また、増やすチャンスを掴むべき理由】
今こそ、日本人が国内にとどまらず、世界に目を向けて新たなビジネスチャンスを探し、資産を形成する時代が来ました。本稿は、特に個人投資家に焦点を当てた内容をお届けいたします。
もし資産を日本国内だけに保有している場合、以下のリスクや問題に直面する可能性があります:
- 銀行預金では資産が増えない(場合によっては管理費がかかる)。
- 国内の投資機会が限られている。
- 資産を移転する場合の所得税、譲渡税、配当税、贈与税、相続税など、多くの税金が発生する可能性がある。
- 円安や物価上昇の影響で資産価値が下がるリスク。
その結果、現在、多くの日本人個人投資家が、ドバイ、シンガポール、インドネシアなどの国々で法人を設立し、日本からこれらの国々へ資産を移すことや、現地で得た収益を再投資することを検討しています。この動きは、資産を守りながら成長させるための自然な流れであり、ベトナムもその選択肢として注目を集めています。
【ベトナムは個人投資家にとって魅力的な市場】
ベトナムは、安定した政治環境、透明性の高い税制、豊富な労働力、そして拡大を続ける市場を持つ、投資先として非常に魅力的な国です。本稿は、ベトナム進出を検討する日本人個人投資家に向け、以下のテーマを詳しく解説します。
- ベトナムでの法人設立に必要な手続と注意点。
- 税制や投資優遇政策に関する実務的なアドバイス。
- ベトナム市場のポテンシャルと資産形成の戦略。
本稿は、ベトナムにおける投資に精通したベトナム国弁護士ブイ・ホン・ズオンと日本国弁護士盛一也の豊富な実務経験に基づき、多くの日本人個人投資家を成功に導いてきた知識を凝縮しています。特にハノイ、ホーチミン、ダナンなどでの投資事例も交えた情報をお届けします。
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02 - なぜベトナムは魅力的な投資先なのか? |
2.1 政治的安定性
- ベトナムは一党制国家であり、政党間の対立等が存在しないため、政治的に安定しています。
- ベトナム共産党の指導のもと、中央政府から地方自治体に至るまで、政治的な方針や経済政策が統一的です。
2.2 税制の透明性
- ベトナムの税制は比較的透明性が高く、先進国に近い制度を採用しています。また、投資家の資産の所有権を侵害するような独裁的な税制は存在しません。
- 日本とベトナムの間では二重課税防止協定が締結されており、投資家の税負担を最小限に抑える仕組みが整っています。確かに、税控除や免税手続はやや煩雑ですが、二重課税防止協定がない国と比較すると、大きな利点となります。
2.3 豊富なリソース
- ベトナムは、若くて技術力のある豊富な労働力を有しています。
- 消費市場は拡大しており、ベトナム人の消費傾向は年々拡大し、海外ブランドやサービスの使用も積極的です。
- 経済成長の余地が大きく、さまざまな分野での発展が期待できます。
2.4 金融機関の支援
- ベトナムの銀行や投資ファンド等の、金融機能の支援をする機関の発展は、投資家が国際送金手続を安心して行える環境を整えています。
- 資金洗浄の疑いがある場合や資金の出所を証明できない場合を除き、送金が停止されるリスクは非常に低いです。また、政策リスクによる送金の遅延や中断もほとんど発生しません。
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03 - ベトナムでの投資物語:日本人個人投資家の事例 |
ある日本人個人投資家Xが、国内での資産運用に限界を感じ、ベトナムでの投資を決断しました。Xさんは、自らの財産をより効率的に運用し、経済変動の影響を受けにくい環境を求めていました。以下は、彼がベトナム進出に当たって疑問に思った点とそれに対する回答です。
【ベトナムでの会社設立に関するFAQ】
Q1: 外国人個人がベトナムで会社を設立できますか?
A: はい、外国人個人投資家も法人での投資と同様に、ベトナムで会社を設立することが可能です。むしろ、個人投資家の場合は、手続が比較的簡素化されており、容易な投資が可能です。具体的には、登録資本金証明書や2年間の財務報告書の提出は不要で、銀行口座の残高証明書で財務能力を証明するだけで済みます。
Q2: ベトナム企業の法定代表者に外国人を指名できますか?
A: 可能ですが、以下の点に留意が必要です:
- 法定代表者はベトナムに居住する必要があります。日本人が常時ベトナムに滞在できない場合は、ベトナム人を法定代表者として指名する選択肢もあります。その際、弁護士に相談して、権限と責任の分担について明確にすることをお勧めします。
- ベトナムに年間3回以上、または1回につき30日以上滞在する場合、労働許可証が必要になります。
- 2025年7月1日以降、法定代表者には社会保険加入が義務付けられます。
Q3: ベトナムでの現地法人設立に必要な資本金はどのくらいですか?
A: 一般的なビジネスの場合、法的な最低資本金要件はありませんが、以下の実務上のポイントがあります:
- ハノイでの会社設立には最低1,500万円以上の資本金が必要とされる場合が多い(特別な政策によるもの)。
- 提出する事業計画書に基づき、適切な投資額を求める場合があります。
特定業種には法定資本金要件があります。例えば:
法定資本金を求める事業・分野 |
法定資本金の金額 |
大学事業 |
1,000,000,000 VND |
幼稚園事業 |
学生1人当たり、30,000,000 VND |
労働者派遣事業 |
2,000,000,000 VND(デポジット金) |
人材紹介事業 |
300,000,000 VND(デポジット金) |
保険事業 |
300,000,000,000 VND |
証券コンサルティング事業 |
10,000,000,000 VND |
会計監査法人事業 |
5,000,000,000 VND |
【注意点:借入枠の登録】
現地法人を設立するための投資登録証明書(IRC)を取得する際に、総投資額の登録が必要です。総投資額は自己資本金と借入枠で構成されます。自己資本金は会社の定款資本金と同額であるため、必ず会社に出資する必要があります。他方で、借入枠は、将来的に投資プロジェクトの実施や拡大、または流動資金の確保において、自己資本を超える資金が必要となる場合に備え、親会社や金融機関から資金を調達するために事前登録するものです。調達額は必ず借入枠の範囲内に収める必要があるため、金額的に余裕を持って多めに登録することをお勧めします。
Q4: ベトナムでの現地法人設立を設立するための会社の住所について、何か注意しなければならない点がありますか。
A:以下の点を注意しなければなりません。
- 事業内容や規模に応じて、会社の住所が認められるかどうかは当局の判断に依存します。そのため、候補物件を決めた後、会社の設立業務を依頼する弁護士に事前に共有して、登録できるかどうかを確認してもらうのが適当です。
- IRCを取得するためには、事務所の賃貸契約を締結する必要があります。ただし、IRC取得にはおおよそ2~3か月程度の期間を要します。この期間中は、各種準備を進めることが可能ですが、基本的に事業活動を行うことはできません。このため、2~3か月分の賃料が発生すると、経済的負担が大きくなる可能性があります。そのため、物件オーナーと交渉し、IRC取得のための基本賃貸契約(賃料が発生しない)を先に締結し、IRC取得後に正式な賃貸契約を締結することをお勧めします。
- バーチャルオフィスを利用する場合でも、基本的に法的な問題はありません。ただし、税務調査に関連して、以下の点に注意が必要です。同じフロア(住所)に多数の会社が登記されている場合、他社の税務違反(脱税や不正なレッドインボイス取引など)が発覚した際に、同じフロア(住所)に登録されているすべての会社が調査対象となるリスクがあります。この調査期間中には、税コードが一時停止される可能性があります。
- IRCを取得するためには、所在地に関する書類を当局に提出する必要があります。そのため、これらの必要書類が提供可能かどうかを、賃貸契約(または基本賃貸契約)を締結する前に物件オーナーに確認する必要があります。物件オーナーが外国投資家に賃貸を出す経験がない場合には、どのような書類を提出する必要があるのかについて必ずしも把握しているわけではありませんので、担当の弁護士に依頼して、弁護士から確認した方が円滑に進めることが可能です。
Q5: 親会社が子会社から配当を受け取る方法について教えてください。
A:ベトナムにおける外資系企業の所有者が、子会社から報酬や配当を受け取る場合、以下の重要なポイントを理解しておくことが必要です。
1. 配当(利益分配)の受け取り
- 個人所有者の場合
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- 子会社が個人所有者(株主/持分主)に給与を支払うことは認められていません。仮に給与を支払った場合、その支出は
- 子会社にとって控除可能な経費として認められません。子会社の利益は、法人所得税を支払った後に分配可能です。
- 法人所得税率:事業分野により異なります。
- IT関連分野など、税制優遇を受ける場合:0%(免税期間によります)
- 一般的な税率:20%
- 個人所得税:ベトナムでは、配当として受け取った利益には個人所得税は課税されません。
- ただし、日本に居住している個人が日本へ送金する場合、または日本国内で課税対象として申告する必要がある場合、税務上の義務が発生します。
- 日越二重課税防止協定に基づき、配当所得に対する税率は日本国内では最大で10%と規定されています。
アドバイス: 日本での税務申告を行う際、現地の税務代理人と協力し、二重課税防止協定を活用して正確に処理を行いましょう。また、配当金を送金する際、税務申告や監査に必要な書類(契約書、送金明細、税務申告書)を準備し、保管する必要があります。
Q6: ベトナム現地法人は、日本法人に何かの業務を委託して、日本法人に報酬を支払うことができますか。
A:ベトナム現地法人は、日本の法人と各種契約(※)を締結して、ベトナム法人から日本法人に報酬を支払うことができます。
※各種契約の例としては、業務委託契約、ノウハウ提供契約、技術支援契約等です。
【業務委託契約による報酬の受け取り】
- 子会社が親会社(日本企業)に業務委託を行い、業務委託契約を締結することで、親会社が業務委託費用として報酬を受け取る方法もあります。
- この場合、親会社は以下の条件を満たす必要があります。
- 契約の締結: 子会社と親会社間で明確な業務委託契約を締結。
- 費用の支払い: 子会社が親会社に業務委託費を支払う。
- 業務内容の明確化
- ベトナムでの税務義務:
- 親会社は、ベトナムで 源泉徴収税(外国請負業者税) を支払う必要があります。
- 税率はサービスの種類や契約条件により異なります。
Q7: ベトナムでの定期預金をすることはできますか。
A:ベトナムにおいて、企業や個人が資金を効率的に運用するためには、銀行の預金サービスを活用することができます。それぞれの条件や特徴について以下で解説します。
1. 企業口座を利用した貯金
- 対応方法:
- 企業が所有するVND(ベトナムドン)の資金を、銀行の窓口で定期預金に預け入れることが可能です。また、オンラインバンキングを利用して定期預金を設定することもできます。
- 利息:
- 利率は預金の期間(短期、長期)や、各銀行の運用方針によって異なります。長期で預けるほど、より高い利息を得られる傾向があります。
ポイント: 企業口座での預金は、事業の運転資金を効率的に活用し、利息収入を得る手段として適しています。
2. 個人口座を利用した貯金
- 条件: 個人がベトナムで預金口座を開設し、資金を預け入れる場合には以下の条件を満たす必要があります。
- 資金の出所を証明できること:
- 預け入れる資金の出所を証明する書類(給与、報酬、配当金などの記録)を提出する必要があります。
- 長期滞在許可証(レジデンスカード)を所持していること:
- ベトナムでの滞在期間が1年以上の長期滞在許可を持つ外国人であることが条件となります。
- 運用方法:
- VNDを預金する際は、短期または長期の定期預金口座を選択できます。
- 金利は企業口座と同様、預金期間や銀行ごとに異なります。
3. 実務上のアドバイス
- 金利の比較:
- 銀行ごとの金利や特典を事前に調査し、最適な運用プランを選択しましょう。
- 必要書類の確認:
- 企業や個人での口座利用に関わる書類(住所証明、資金証明など)を確実に準備しておくことが重要です。
- 為替リスクの管理:
- 日本円からベトナムドンへの両替や、逆にベトナムドンを日本円に戻す際には為替リスクが伴います。長期的な資産運用計画を立てる際に注意してください。
Q8: ベトナムで企業向けクレジットカードを開設できますか。
A:企業活動を効率的に運営するため、ベトナムでは法人向けクレジットカードの利用が可能です。しかし、税務や法規制の観点から一定の制限があります。以下では、企業向けクレジットカードの開設や運用に関する詳細と留意点を解説します。
1. ベトナムでの企業向けクレジットカードの開設
- 開設可能性:
法人はクレジットカードを開設し、企業活動に関連する支出に利用することができます。たとえば、事業経費の支払い、社員の出張費、備品購入などに活用可能です。 - 銀行選び:
法人向けクレジットカードを提供しているベトナムの主要銀行(Vietcombank, Techcombank, BIDVなど)に相談することで、最適なサービスを選べます。
2. 利用における留意点
ベトナムの税務当局は、クレジットカードを利用した企業の支出について厳格に審査します。そのため、すべての経費が適切に記録され、証拠書類が揃っている必要があります。以下は、企業向けクレジットカードの利用時に注意すべき条件です:
- 経費の適格性:
- 支出が企業の業務目的に合致していること。
- たとえば、製品開発、販売促進、事務用品購入などの支出は認められる可能性が高いです。
- 証拠書類の整備:
- 以下の書類を揃えることで、経費として認められる確率が高まります:
- 契約書(購入先や取引先との契約内容を明確にするため。)
- 請求書や領収書(VATインボイスを含む。)
- 業務完了報告書(業務完了を証明するための文書等)
- 書類に不備がある場合、税務調査で経費として認められないリスクがあります。
- 銀行振込を通じた支払い:
- ベトナムでは、現金取引よりも銀行を通じた支払いが推奨されており、税務上のリスクを減らすためにも、必ず銀行振込を利用するのが適当です。
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04 - 実務経験から得た投資に関する注意点 |
ベトナムでの投資を成功させるためには、以下のポイントに留意することが重要です。これらは過去の実務経験を基にしたもので、特に日本人投資家にとっては参考にしていただきたいです。
1. 投資地域選定における注意点
投資地域ごとに異なる政策や優遇条件があり、業種や事業内容に応じて適切な地域を選ぶことが重要です。地域ごとの特徴は以下の通りです。
- ハノイ
- 最低資本金要件がある場合が多いですが、IRC(投資登録証明書)の有効期間が長いため、優遇投資条件が適用される事業には最適です。
- 資金力や長期投資を見据えた場合、安定的な選択肢となります。
- ダナン
- 最低資本金要件はありませんが、IRCの有効期間が短く(通常2~3年)、更新手続に費用がかかります。
- 短期間での事業運営を目指す投資家に適しています。
- ホーチミン
- 最低資本金要件はありませんが、IRCの有効期間はハノイほど長くないものの、ダナンよりも長いです。
- 投資条件(例えば所在地や業種の適合性など)に関する審査が厳しいため、事前準備が必要です。
2. 法改正や政策変更への迅速な対応
ベトナムでは、投資、税制、保険、財務に関する政策が頻繁に改正されます。そのため、最新情報を把握し、柔軟に対応できる体制を整えることが必要です。
3. 税務調査への準備
近年、税務当局による企業への調査が一層厳しくなっています。これに対応するためには、経験豊富な地元の税務代理人や会計事務所を選定し、日常的な会計・税務業務を正確に進めることが肝要です。
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05 - ベトナムにおける会社設立と運営の費用 |
ベトナムでの会社設立と運営にかかる費用は、事業規模や業種に応じて異なりますが、以下は一般的な費用項目とその平均的な金額です。これを参考に、初期投資計画を立てる際の目安としてください。
費用項目と平均金額
費用項目 |
平均金額 |
1. オフィス賃貸費用 |
シェアオフィス等の共用オフィスを利用する場合、会社住所として登録可能なオフィスを月額 500USD 程度から借りることができます。 |
2. 外資系企業の設立費用 |
3,000USD~(業種による) |
3. 税務・会計業務のアウトソーシング費用 |
月額 250USD~ |
4. 年次税務決算費用 |
年間 500USD~(事業分野や規模による)。 |
5. 財務監査費用 |
年間 500USD~(事業分野や規模による)。 |
6. 人件費 |
500USD~ |
ポイント
- 初期費用と運用費用のバランス ベトナム進出の際には、初期費用を抑えた柔軟な選択肢から選択できるものの、事業規模や法的条件に応じた正確な計画を設計することが肝要です。例えば、オフィス賃貸の際にはは、共用オフィスの活用が費用削減のポイントとなります。
- 専門的なサービスの活用 税務や会計、法務関連のアウトソーシングサービスを活用することで、法令遵守と業務効率化を図ることができます。特に日本語対応可能な専門家のサポートは、言語の壁を越えたスムーズな事業運営に役立ちます。
- 人材採用 ベトナムは人材が豊富な国ですが、ポジションや業界によって人件費が異なります。募集条件や待遇についての市場調査が重要です。