公開 2026年07月23日  I 更新 2026年07月23日

ベトナムの労働許可証 就労形態・社会保険・給与・税務の実務上の留意点

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ベトナムの労働許可証 就労形態・社会保険・給与・税務の実務上の留意点


労務 公開 2026年07月23日  I 更新 2026年07月23日
目次

ベトナムの労働許可証は、保険、給与、税務、費用計上、労働契約、出向関係書類にも影響します。外国人労働者の職位・就労形態を適切に選択し、関連書類を一体的に整備するための実務上の留意点を解説します。

外国人労働者の労働許可証を申請する際、企業や労働者は、費用を抑えるため、低い料金を提示するコンサルティング会社を優先する傾向があります。しかし、サービスの内容が、労働許可証を取得するために必要な申請書類の作成にとどまる場合、企業は、当該労働者を雇用する期間を通じて、結果としてより大きな費用やリスクを負う可能性があります。

労働許可証は、独立した一つの行政手続ではなく、また、ベトナムで就労する権利を証明する単なる「一枚の書類」でもありません。申請書類において選択する職位および就労形態は、労働関係、保険加入義務、給与の支払方法、費用計上の可否、個人所得税、出入国手続、ならびに企業の社内書類体系全体に直接影響する可能性があります。

したがって、適切な目標は、単に「労働許可証を取得すること」ではなく、企業における実際の人材活用モデルに整合した、一貫性があり、適法かつ適切な法的スキームを構築することです。

 

01 - 低価格のサービスが、結果として高コストの雇用スキームにつながる場合があります

 

コンサルティング料金が低いこと自体は、サービスの品質が低いことを意味するものではありません。問題となるのは、申請を容易にすること、受理されやすい方法を選択すること、または必要書類をできる限り少なくすることのみに重点を置き、労働許可証の取得後に生じる法的影響を十分に検討しない場合です。

実務上、同一の外国人労働者であっても、その役割、親会社との関係、給与の支払方法およびベトナムへの異動目的に応じて、異なる職位または就労形態を検討できる場合があります。労働許可証の取得という短期的な結果のみを目的として選択すると、企業には次のような問題が生じる可能性があります。

  •    想定していなかった強制保険への加入義務が発生すること。
  •    ベトナム法人が労働契約を締結し、または給与を直接支払うための適切な法的根拠を確保できないこと。
  •    給与、手当または出向費用が、法人所得税の計算上、損金算入の要件を満たさないこと。
  •    労働契約、出向決定書、給与台帳、給与・賞与規程および税務書類が、労働許可証に記載された就労形態と整合しないこと。
  •    労働者の就労開始後に、人事、会計および支払の仕組み全体を改めて変更する必要が生じること。
  •    労働監査、保険検査、税務調査または在留手続の際にリスクが生じること。

そのため、労働許可証の申請段階で削減できる費用は、後に生じる保険料、追徴税、損金算入が認められない費用、または書類体系の再構築費用と比べれば、ごく小さい場合があります。

 

02 - 就労形態は、その他の多くの法的義務を左右します

 

2.1. 保険加入義務への影響

2024年社会保険法によれば、ベトナムの使用者との間で期間12か月以上の有期労働契約に基づきベトナムで就労する外国人労働者は、原則として強制社会保険の加入対象となります。ただし、外国人労働者のベトナム就労に関する法令に定める企業内人事異動の場合など、法令上の適用除外に該当する場合を除きます。

このことからも、就労形態の選択は、労働許可証上の名称を変えるだけではないことが分かります。ベトナムで労働契約を締結する形態を選択した場合、企業には、対応する強制保険への加入および保険料納付義務が生じる可能性があります。一方、労働者が実際に企業内人事異動の要件を満たし、書類がその実態に即して整備されている場合、当該労働者について強制社会保険への加入義務が生じないことがあります。

この違いは、労働者がベトナムで就労する期間全体を通じて、相当な費用差となる可能性があります。ただし、保険負担を軽減することのみを目的として、企業内人事異動を選択することはできません。この形態は、海外法人との労働関係、異動前の雇用期間、企業間の関係および出向関係書類が、いずれも法令上の要件を満たす場合に限り適切です。

 

2.2. 労働契約の締結および給与支払への影響

労働契約を履行する形態では、ベトナム法人が使用者となり、労働者と労働契約を締結し、給与を支払います。給与、労働時間、休憩・休暇、労働規律および労働関係の終了に関する権利義務は、両当事者の間に直接成立します。

これに対し、企業内人事異動の場合、労働関係は、原則として海外法人との間で継続します。BETOHOがこれまで分析したガイダンスおよび実務運用によれば、ベトナム子会社は、ベトナムで採用した人材の場合と同様に、当該労働者との間で別の労働契約を締結し、または給与を直接支払うべきではありません。労働許可証に企業内人事異動と記載されているにもかかわらず、子会社が労働契約を締結し、給与を直接支払い、使用者としてすべての待遇を管理する場合、各書類の内容が相互に矛盾し、選択したスキームの法的根拠が弱くなる可能性があります。

 

2.3. ベトナム子会社の費用への影響

検討すべき点は、誰が給与を支払うかという問題にとどまりません。企業内人事異動の形態では、通常、親会社が引き続き労働者に給与を支払う一方、ベトナム子会社が出向者の業務から直接利益を受けます。適切な費用配賦または費用精算の仕組みがなければ、子会社は人件費を計上する根拠を確保できない可能性があります。他方、登録した就労形態に合致しない方法で子会社が給与を直接支払った場合、当該支出が損金として認められず、さらに労務、保険および税務上のリスクが生じる可能性があります。

実務上の一つの方法として、親会社が労働者に給与を支払い、その後、適切な出向契約、人材提供に関する合意または社内サービスの仕組みに基づき、子会社に費用を配賦し、または子会社から精算を受ける方法が考えられます。ただし、この方法は、出向内容、業務範囲、費用の算定原則、支払証憑、インボイス、および事案に応じた関連者間取引、外国契約者税その他の税務上の要件と整合するよう、一体的に設計する必要があります。

BETOHOの関連記事:企業内人事異動の場合にベトナム子会社が給与費用を計上するための実務対応策

 

2.4. 税務、出入国手続および社内管理への影響

労働許可証上の職位および就労形態は、個人所得税申告書類、住宅賃貸借契約および各種福利厚生、ビザまたは一時滞在許可証の申請書類、扶養親族の登録内容、給与・賞与規程ならびに企業の会計制度とも整合していなければなりません。労働許可証の申請段階における小さな不整合が、関係当局によって複数の書類が照合された際に、大きな問題となる可能性があります。

 

03 - 労働許可証と関連書類は、一体的かつ整合的に整備する必要があります

 

適切な職位および就労形態を決定した後、企業は関連する法的書類を同時に整備する必要があります。労働許可証の申請を一つの業者に、労働契約を別の業者に依頼し、さらに会計部門が整合性を確認する仕組みのないまま、独自に給与の支払方法および費用計上方法を決定することは適切ではありません。

想定する就労形態

主な関係書類

整合させるべき事項

労働契約の履行

労働許可証、労働契約、賃金表または給与支払の仕組み、賞与・福利厚生規程、保険および税務書類。

ベトナム法人が使用者となります。職位、役職、就労場所、期間、給与および待遇を労働許可証と整合させる必要があります。

企業内人事異動

労働許可証、海外法人との労働契約、出向決定書、出向契約・合意書、企業間関係を証明する書類、費用配賦の仕組み。

登録した形態に反する二重の労働関係を生じさせず、給与支払主体、費用負担者および業務管理主体を明確にし、会計、税務および関連者間取引の証憑を整備します。

企業内人事異動以外の海外法人からの派遣、または契約・合意の履行

ベトナムへの派遣文書、当事者間の契約または合意、職務記述書、支払方法および税務書類。

派遣目的、管理主体、受益者、支払者および就労期間を、労働許可証に記載される就労形態と整合させる必要があります。

 

04 - 職位および就労形態を決定する際に実務上よく生じる問題

 

4.1. Manager」または「Director」という役職名だけで、当然に管理者となるわけではありません

外国人労働者は、管理者、業務執行責任者、専門家または技術者のいずれかの職位でベトナムにおいて就労できます。実務上、政令219/2025/ND-CPが、管理者について、一部の他の職位と同様の専門学位または経験年数に関する独立した要件を設けていないことから、管理者として労働許可証を申請する企業が多くあります。

しかし、政令219/2025/ND-CPは、役職名のみに基づいて管理者を定義していません。管理者は、企業法第4条第24項に定める企業管理者、または法令に基づく機関・組織の長もしくはその副職でなければなりません。したがって、「Sales Manager」、「Business Director」または「General Manager」という役職名を有する者が、当然にベトナム法上の管理者に該当するわけではありません。

企業は、定款、ガバナンス体制、権限分配制度ならびに任命決定書または異動決定書に基づき、当該職位の根拠を証明する必要があります。申請機関は、職位の実質、権限の範囲、報告関係、管理下にある従業員数、および企業活動に対する責任についても検討することがあります。

実務例:ABC有限責任会社が、定款に記載された営業部長という役職について、管理者の職位で労働許可証を申請したとします。この場合でも、申請機関が、当該者は一部門の責任者にすぎず、企業管理者としての役割が十分に示されていないと判断すれば、追加説明を求められる可能性があります。従業員数および定款資本は独立した法的要件ではありませんが、企業が説明する管理体制の合理性を評価する際に、実務上考慮されることがあります。

 

4.2. 企業内人事異動における「ベトナムで就労する直前」の要件

企業内人事異動により就労する外国人労働者は、ベトナムで就労する直前までに、海外企業において少なくとも12か月間継続して雇用されていなければなりません。この「直前」という文言について、ベトナムで長年就労している者が次回の労働許可証を新規申請する場合、異なる解釈が生じています。

実務上、労働者が長期間ベトナムに滞在しているため、ベトナム入国の「直前」に12か月間継続して雇用されていたという要件を満たさないと判断された例があります。BETOHOの見解では、この要件は、労働者が海外企業からベトナムへ初めて異動した時点における資格を確認するためのものであり、各申請時点において改めて成立させる必要がある要件ではありません。また、引き続き各要件を満たす限り、労働者が新たな労働許可証の発給を受けられる回数について、法令上の上限は設けられていません。

 

4.3. 専門家の大学の専攻は、予定する職務と一致している必要がありますか

政令219/2025/ND-CP3条第3項は、専門家について、大学卒業以上またはこれと同等の資格を有し、かつ、ベトナムで予定する職位に適合する実務経験を少なくとも2年以上有することを定めています。この規定は、学歴に関する要件と、適合する実務経験に関する要件という二つの独立した要件を示しています。

BETOHOの見解では、「適合性」は実務経験について直接規定されており、大学の専攻名が予定する職位と一致しなければならないとは、法令上明確に定められていません。したがって、語学を専攻して大学を卒業した者であっても、その後、購買、サプライチェーンまたは事業開発の分野で長年勤務している場合、専攻が一致しないことのみを理由に、当然に専門家の要件を満たさないと判断すべきではありません。重要なのは、実際の経験が予定する職位に適合することを資料によって証明できるかどうかです。

 

4.4. ハノイにおける申請受付機関の変更

2026年前半、ハノイにおける労働許可証の新規発給、再発給および更新手続の権限が変更されました。2026115日付決定114/QD-SNVに基づき、2026126日から、ハノイ市内務局は、所定の範囲に属する使用者について、各行政区の人民委員会に手続処理を委任しました。その後、202669日付決定1052/QD-SNVに基づき、2026620日から、各行政区の人民委員会は再発給および更新手続を引き続き担当する一方、労働許可証の新規発給および労働許可証の取得対象外確認書の発給は、再び内務局に集約されました。

申請受付機関の変更は、労働許可証の審査が、単に書類の有無を確認する手続ではないことを示しています。担当者は、職位、職業コード、学歴、実務経験、就労形態、ならびに労働者とベトナム法人および海外法人との関係の整合性を評価する必要があります。権限移管の初期段階では、各機関から求められる説明が完全には統一されていない場合があります。

 

05 - 申請前に企業が行うべきこと

 

  •    実際の人材活用目的を明確にします。すなわち、労働者がベトナムにおいて子会社に採用されるのか、親会社から出向するのか、または特定の契約・合意を履行するのかを確認します。
  •    職位と就労形態を一体として検討し、役職名または必要書類が最も少ない方法のみを基準として選択しないようにします。
  •    保険、給与、個人所得税、損金算入および関連者間取引への影響を事前に試算します。
  •    労働許可証と、労働契約、出向決定書、出向契約、職務記述書、給与・賞与規程および会計書類を一体的に整備します。
  •    労働許可証の申請書類、ビザ・一時滞在許可証、給与台帳、税務書類および社内ガバナンス体制の整合性を確認します。
  •    書類は申請のためだけではなく、労働監査、保険検査または税務調査の際に説明できるよう保管します。

まとめ

適切な申請書類であるかどうかは、労働許可証が発給されたかどうかだけで判断されるものではありません。当該書類は、労働者が承認された職位、就労形態、就労場所および期間に従って就労できるようにするとともに、企業が関係書類を締結し、給与を支払い、保険に加入し、費用を計上し、税務上の義務を履行するための一貫した根拠となる必要があります。

したがって、企業は、労働許可証の申請手続を、労働関係および関連する法的書類の設計から切り離すべきではありません。料金の低さのみを理由としてコンサルティング会社を選択し、そのサービスに労務、保険、税務および会計の総合的な検討が含まれていない場合、労働許可証は取得できても、実際には適法または効率的に運用できないスキームとなる可能性があります。

BETOHOは、職位および就労形態の決定、労働許可証の申請手続に加え、労働契約、出向関係書類、給与の仕組み、保険、税務および関連費用の確認を含め、外国人労働者を受け入れるためのスキームを当初から構築する支援を行っています。目的は、許可取得手続を完了することだけではなく、労働者がベトナムで就労する期間を通じて安定的に運用できる書類体系を整備することです。

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