公開 2025年04月09日  I 更新 2025年04月09日

Case Study NO.2|ベトナムにおける外国企業によるデイサービス事業進出の法的検討

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Case Study NO.2|ベトナムにおける外国企業によるデイサービス事業進出の法的検討


その他 公開 2025年04月09日  I 更新 2025年04月09日
目次

ベトナムでデイサービス(通所介護)事業を展開したい外国企業必見!本記事では、外資規制・事業登録要件・CPTPP適用の可能性・VSIC8730の施設基準・BCC/M&A等の進出スキームを徹底解説! 介護サービス(CPC93191)のライセンス取得方法や、ベトナム法上の実務上の注意点を、現地弁護士が詳しく助言します。ベトナム高齢化市場で介護ビジネスを検討中の日本企業に最適な実務ガイドです。

01 - 事案の概要

 

日本企業であるXXX社は、ベトナム(ハノイ市)において、高齢者向けのデイサービス(通所介護)事業の展開(以下、本件事業と言います)を検討されております。

ベトナムでは近年、高齢化の進展と共に、介護サービスへの需要が急増しており、都市部では高齢者向け施設や在宅支援のニーズが高まっております。

このような状況の中、XXX社より、「ベトナムにおいて日本企業が単独でデイサービス事業を展開できるのか」、またその際の外資規制、登録可能な業種、必要手続やリスク等について、法的なアドバイスを求められました。

 

02 - ベトナム弁護士による法的助言

 

法的論点①:外国投資家によるデイサービス事業の登録可能性

 

本件事業の業種分類は、以下のように特定されます:

サービス内容

該当業種

WTO/FTAでの取扱

健康介助(入浴・食事・歩行等の補助)

CPC 93191

(介護・看護サービス)

「高齢者の健康介助サービス」(VSIC 8730

CPTPP加盟国は100%外資可

高齢者の移動支援(送迎)

旅客運送業

外資参入不可(国内企業との連携必須)

ベトナムはCPTPP加盟国であり、日本企業はCPC 93191に該当する介護サービスを100%外資で登録可能とされています(CPTPP付属書参照)。

ただし

  • 実務上、当局はWTO分類には慣れていても、CPTPPAFASASEAN枠組)に基づく登録には不慣れな場合が多く、追加説明・交渉が必要となる可能性があります。
  • よって、CPTPPの条文根拠を提示しつつ、事前説明を行うアプローチが必要です。

 

法的論点②:認可における登録条件(VSIC 8730

 

「高齢者の健康介助サービス」(VSIC 8730)として事業登録する場合、以下の条件を満たす必要がございます:

区分

主な要件

法人形態

一般法人または社会法人として設立可

代表者の要件

民事行為能力が完全で、犯罪歴や訴追歴がないこと

施設基準

都市部:利用者1人当たり10㎡以上、バリアフリー設計、電気・上下水設備完備など

従業員要件

介助能力、道徳的適格性、健康、一定人数以上の配置義務あり

設立には一定の資本的・人的要件を満たす必要がありますが、それを見たすれば、原則的に登録は可能です。

 

法的論点③:事業スキーム別の比較(単独設立・BCCM&A

 

XXX社は、本件事業を進出する際の主要な選択肢は以下の3つです:

スキーム

概要

主な利点

留意点

単独設立

XXX社の100%出資法人にて事業を展開

意思決定の自由度が高い

外資規制や登録審査が厳しくなる傾向

② BCC契約

ベトナムローカル企業との事業協力契約(法人設立なし)

法的手続きが簡略化、迅速に展開可能

パートナーとの合意形成や紛争リスクあり

③ M&A

ローカル企業を買収し既存ライセンスを活用

登録済みライセンスをそのまま利用可能

買収後の管理負担やリスク調査が必要

推奨スキーム(初期展開フェーズにおいて): ②BCCスキーム
迅速かつ柔軟に事業を開始でき、現地側のライセンスを活かすことが可能なため。

 

結論と今後の対応指針

XXX社がベトナムにおいて本件事業を進出する場合、CPTPPを根拠とした外資100%での進出も理論的には可能ですが、実務上は行政の慣習を踏まえた対応が求められます。

従って、以下の手順で進めていただくことをお勧めいたします。

  1. 事業目的・サービス内容を「CPC93191」に明確化し、ライセンス交渉に備える
  2. BCCスキームにより、ライセンスを持つローカル企業と連携し、速やかな事業展開を行う
  3. 将来的に単独展開またはM&Aに切り替える計画的戦略を立てておく
  4. 現地施設基準・人材要件などを満たす施設の確保と人材戦略を早期に進める

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