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01 - 事案の概要 |
日本企業であるXXX社は、ベトナム(ハノイ市)において、高齢者向けのデイサービス(通所介護)事業の展開(以下、本件事業と言います)を検討されております。 ベトナムでは近年、高齢化の進展と共に、介護サービスへの需要が急増しており、都市部では高齢者向け施設や在宅支援のニーズが高まっております。 このような状況の中、XXX社より、「ベトナムにおいて日本企業が単独でデイサービス事業を展開できるのか」、またその際の外資規制、登録可能な業種、必要手続やリスク等について、法的なアドバイスを求められました。 |
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02 - ベトナム弁護士による法的助言 |
▶ 法的論点①:外国投資家によるデイサービス事業の登録可能性
本件事業の業種分類は、以下のように特定されます:
サービス内容 |
該当業種 |
WTO/FTAでの取扱 |
健康介助(入浴・食事・歩行等の補助) |
CPC 93191 (介護・看護サービス) 「高齢者の健康介助サービス」(VSIC 8730) |
✅ CPTPP加盟国は100%外資可 |
高齢者の移動支援(送迎) |
旅客運送業 |
❌ 外資参入不可(国内企業との連携必須) |
ベトナムはCPTPP加盟国であり、日本企業はCPC 93191に該当する介護サービスを100%外資で登録可能とされています(CPTPP付属書参照)。
✅ただし:
- 実務上、当局はWTO分類には慣れていても、CPTPPやAFAS(ASEAN枠組)に基づく登録には不慣れな場合が多く、追加説明・交渉が必要となる可能性があります。
- よって、CPTPPの条文根拠を提示しつつ、事前説明を行うアプローチが必要です。
▶ 法的論点②:認可における登録条件(VSIC 8730)
「高齢者の健康介助サービス」(VSIC 8730)として事業登録する場合、以下の条件を満たす必要がございます:
区分 |
主な要件 |
法人形態 |
一般法人または社会法人として設立可 |
代表者の要件 |
民事行為能力が完全で、犯罪歴や訴追歴がないこと |
施設基準 |
都市部:利用者1人当たり10㎡以上、バリアフリー設計、電気・上下水設備完備など |
従業員要件 |
介助能力、道徳的適格性、健康、一定人数以上の配置義務あり |
✅設立には一定の資本的・人的要件を満たす必要がありますが、それを見たすれば、原則的に登録は可能です。
▶ 法的論点③:事業スキーム別の比較(単独設立・BCC・M&A)
XXX社は、本件事業を進出する際の主要な選択肢は以下の3つです:
スキーム |
概要 |
主な利点 |
留意点 |
① 単独設立 |
XXX社の100%出資法人にて事業を展開 |
意思決定の自由度が高い |
外資規制や登録審査が厳しくなる傾向 |
② BCC契約 |
ベトナムローカル企業との事業協力契約(法人設立なし) |
法的手続きが簡略化、迅速に展開可能 |
パートナーとの合意形成や紛争リスクあり |
③ M&A |
ローカル企業を買収し既存ライセンスを活用 |
登録済みライセンスをそのまま利用可能 |
買収後の管理負担やリスク調査が必要 |
✅推奨スキーム(初期展開フェーズにおいて): ②BCCスキーム
→ 迅速かつ柔軟に事業を開始でき、現地側のライセンスを活かすことが可能なため。
◆結論と今後の対応指針◆ XXX社がベトナムにおいて本件事業を進出する場合、CPTPPを根拠とした外資100%での進出も理論的には可能ですが、実務上は行政の慣習を踏まえた対応が求められます。 従って、以下の手順で進めていただくことをお勧めいたします。
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