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太陽光発電所プロジェクトは、国家のグリッドに接続するプロジェクトと、屋根設置型太陽光発電プロジェクトの2つに分類されます。本稿では、前者の国家のグリッドに接続する太陽光発電所プロジェクトについて述べます。
1. ベトナムにおける太陽光発電所プロジェクトへの投資に関する外資規制について
(1) ベトナムでの太陽光発電事業においては、外国投資家や外資系企業に対して
外資制限がありません。国内企業と同等に扱われ、外国投資家や外資系企業は、100%の単独出資で太陽光発電所プロジェクトを行う法人を設立するか、M&Aによって取得することが可能です。
(2) 発電事業以外の電力関連事業に対する規制
電力事業に関して、発電事業以外の以下の分野には制限があります。
電力事業関係 |
活動が許可される対象 |
発電 |
多目的水力発電所および社会経済的に特に重要な原子力発電所の建設・運営を除き、100%外資が許可されます。 |
送電 |
国家独占 |
国家電力システムの調整 |
国家独占 |
配電 |
100%外資が許可されます(EVNとの電力売買契約を締結)。 |
電力の卸売・小売 |
一部EVNによる独占。 一部自由化(DPPA市場については、2024年7月3日付の政令No. 80/2024/NĐ-CP号を参照)。 |
電力分野の専門コンサルティング業務 |
100%外資が許可されます。 |
2. 進出形態・進出スキームについて
太陽光発電所プロジェクトの新規投資、M&Aを行う場合の一般的なスキームは、以下の通りになります。
順番 |
プロジェクト開発の形式 |
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1 |
自社で開発(独立系発電所_IPP) 100%外資または合弁事業 |
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2 |
M&A |
1. 太陽光発電所プロジェクトを実施する企業の株式または出資分を購入する |
2. 太陽光発電所プロジェクトを譲受する |
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3 |
事業協力契約(BCC)による投資 |
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4 |
プロジェクトファイナンスを通じた投資 |
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5 |
官民パートナーシップ(PPP)による投資 |
3. 電力の売買価格
(1) 2019年6月30日までに商業運転を開始した太陽光発電所プロジェクトの場合
2019年6月30日以前に商業運転を開始したグリッド接続型の太陽光発電所の電力購入価格は、1kWhあたり2.086ドン(付加価値税抜き)で売電することができます。これは、1kWhあたり約9.35米セントに相当し、ベトナム国家銀行が2017年4月10日に発表した為替レート(1USD=22316ドン)に基づいています。
電力販売価格は、ベトナムドンと米ドルの為替レートの変動に応じて調整されます。
(2) 2019年11月23日以前に投資方針が決定され、2019年7月1日から2020年12月31日までの期間に商業運転を開始したグリッド接続型プロジェクトの場合
電力価格は以下の通りです。
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太陽光発電技術 |
電力価格 |
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VNĐ/kWh |
米セント/kWhに相当 |
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1 |
浮体式太陽光発電プロジェクト |
1.783 |
7,69 |
2 |
地上設置型太陽光発電プロジェクト |
1.644 |
7,09 |
3 |
屋根設置型太陽光発電システム |
1.943 |
8,38 |
(3) 特別な条件について
ニントゥアン省においては、電力開発計画に含まれ、2021年1月1日以前に商業運転を開始したグリッド接続型の太陽光発電プロジェクトに対して、累積容量が2000 MWを超えない限り、電力購入価格は2086ドン/kWh(約9.35米セント)に設定されています。
(4) 注意事項
① 電力購入価格には付加価値税が含まれておらず、ベトナムドンと米ドルの為替レートの変動に応じて調整されます(つまり、米ドル価格は固定、ベトナムドン価格は変動)。
② 上記の条件を満たさないプロジェクトについては、競争メカニズム(DPPA)によって価格が決定されます。DPPAについては、2024年7月3日に発表された政令No. 80/2024/NĐ-CP号により基本的な体制が揃っているのですが、実際の運営に関する問題等は、これから生じる可能性があると考えられます。
③ 上記の価格は、太陽電池の効率が16%以上、またはモジュールの効率が15%以上のプロジェクトに適用されます。
④ 売電契約(PPA)期間は商業運転開始日から20年です。
4. 太陽光発電所書プロジェクトの実施プロセス(新規投資の場合)
重要な手続きのコメント
(1) 投資関係の手続きについて
① Pre-FS(Pre- Feasibility Study)の作成、プロジェクト提案の承認
太陽光発電所プロジェクトを実施するには、まずプロジェクトの事前実現可能性調査(Pre-FS)の作成が必要です。これに基づき、投資方針の承認を申請するためのプロジェクト提案書を作成し、地方自治体や国会、政府などに提出します(プロジェクトの規模によって、提出先が異なります)。
【プロジェクトの提案の承認について】
プロジェクト提案のプロセスは、地方自治体や国会、政府(プロジェクトの規模によって、承認される権限機関が異なります)に対して投資意図を示し、プロジェクトの投資方針の承認を得るためのプロセスです。この段階では、外国投資家や外資系企業(以下、「事業者」という)はプロジェクト提案書(事前実現可能性報告書や土地利用の提案書を含む)を提出し、プロジェクトを実施するための財務能力、経験、技術力等を証明する書類を当局機関に提出する必要があります。
※提案の内容や地域のルールに応じて、事業者は地方自治体や関係機関に対して、プロジェクトの提案に関するプレゼンテーションを行い、提案や能力について説明する必要がある場合もあります。
② 発電開発に関する計画・企画への反映、又は発電開発に関する計画・企画との適合性の確認
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- 電力分野に関する計画は、。(1)国家電力発展計画(現在の有効な計画は第8次電力計画)と(2)地方電力発展計画という2つに分けられます。すべての発電プロジェクトは、この計画に適合していなければなりません。計画に組み込まれていない場合は、計画への反映手続きを行う必要があります。
- 原則として、大規模電源(出力が50MWを超える発電所)は国家電力発展計画に含まれ、中・小規模電源(出力が50MW以下の発電所)は地方電力発展計画に含まれます。
- 事業者は、ベトナムでの太陽光発電所プロジェクトに投資する前に、必ず2021年~2030年の期間、および2050年までのビジョンに関する第8次電力計画での電源構成の方向性と国家送電網の計画を確認し、それに適切な提案を策定する必要があります。
- 国家電力計画への反映は、エネルギー総局にて、申請書類を審査し、商工省の大臣を通じて首相に報告、承認されます。また、地方電力計画への反映は、各省の人民委員会を通じて行われます。
- ※しかし、いずれの手続きでも、商工省の承認を得る必要がありますので、各省の人民委員会の窓口で対応する地方電力計画への反映でも、商工省との協議・調整が必要です。
- 電力発展計画の反映には、電力需要、送電網への影響、接続方法などといった様々な場面を判断する必要がありますので、非常に時間がかかります。通常、この手続きには、地方レベルで6~8ヶ月、国家レベルで10~12ヶ月が必要です。
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③ 投資方針承認手続きについて
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- プロジェクトの規模に応じて、投資方針を決定する機関は、(1)国会、(2)首相、(3)地方/市の人民委員会の3つのレベルに分かれます。太陽光発電に関連するプロジェクトで、国から土地や水面の提供や賃貸を求める場合、地方/市の人民委員会から投資方針の承認を得る必要があります。
- また、産業団地、輸出加工区、高度技術区、経済特区で行われる投資プロジェクトが、既に認可された計画に適合している場合は、これらの区を管轄する管理委員会が投資方針を承認します。
- プロジェクト全体の手続きの中で、投資方針の承認を得ることが最も重要です。投資方針の承認を得ることは、他の手続きを進めるための前提条件となります。通常、投資方針の承認プロセスは5〜6ヶ月かかります。その中でも、金融能力の証明(銀行や金融機関からの保証確認)がかなりの時間を要し、2~3ヶ月程度かかることがあります(事業者の能力に依存します)。
- ※ただし、火力発電やガス発電プロジェクトとは異なり、太陽光発電プロジェクトは資金を調達する時、政府による保証を必要としないため、資金調達がより容易に行えます。
- 投資方針の承認を受けた後、事業者は投資登録証明書(IRC)を取得し、プロジェクトを実施するための企業を設立します。このプロセスには約1ヶ月かかります。
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(2) 土地関係の手続きについて
① プロジェクトを実施するための土地や水面を取得するために、事業者は、国家から土地や水面の割り当てや賃貸を受けるか、または土地や水面の使用権を持つ事業者から譲渡を受けてプロジェクトを実施することができます。
※土地や水面の使用権を譲れ受て、プロジェクトを実施する場合、土地や水面の割り当て・賃貸の申請手続きや、補償・用地解放を行う必要はなく、その代わりに土地や水面の使用目的の変更(必要である場合)と、土地使用権登録証明書や水面の使用許可証の情報変更等を行います。
② 国家から土地や水面の割り当て・賃貸を受ける場合、まず、人民委員会から土地使用権の使用ニーズに関する承認を得る必要があります。投資方針の承認を受けた後、事業者は人民委員会に所属する計画投資局と土地を収用するためのデポジット契約を締結します。2020年投資法の規定によれば、デポジットの額は投資プロジェクトの投資資本の1%~3%です。2021年3月26日付けの政令第31/2021/NĐ-CPの規定によれば、デポジット率は以下のように適用されます。
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- 資本金が3,000億ドンまでの部分については、デポジット率は3%
- 資本金が3,000億ドンを超え1兆ドンまでの部分については、デポジット率は2%
- 資本金が1兆ドンを超える部分については、デポジット率は1%
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③ 太陽光発電の投資プロジェクトについては、2021年3月26日付けの政令第31/2021/NĐ-CPの規定により、特別な投資優遇分野に属するため、デポジット金額が50%減額されます。
④ デポジット手続きが完了した後、事業者は、資源環境局と協力して、土地収用、補償、用地解放の決定を取得し、補償および用地解放のプロセスを実施します。補償および用地解放の単価は、人民委員会の土地収用、補償、用地解放の決定に従って行われます。
※しかし、この公式の単価に加えて、通常、事業者は土地を収用される住民と交渉し、収用時点の市場価格と同等の土地価値が維持されるよう、個別の支援策を設ける必要があります。
(3) 建設関係の手続きについて
① 建設を伴うプロジェクトは、プロジェクトの規模、性質、プロジェクトにおいて建設される構造物の種類等によって、国家レベルのプロジェクト、Aレベル、Bレベル、Cレベルに分けられています。
例えば、Aレベルのプロジェクトに該当する場合には、投資方針に関する承認決定を申請する前に、Pre‐FSにおける基本設計の承認を得る必要があります。承認を行う管轄機関は、省レベルの人民委員会に所属する建築局となります。
② 太陽光発電プロジェクトは建設投資プロジェクトに該当するため、プロジェクト実施時には建設法の規定に従う必要があります。その中でも特に、環境影響評価に関する専門的な手続きを遵守する必要があります。2020年環境保護法の規定によると、太陽光発電所プロジェクトは環境影響の予備評価と環境影響評価報告書を作成する必要である場合があります(プロジェクトの規模によります)
環境影響評価報告書の作成および審査の手続きは、特にプロジェクト実施場所での観測データ収集に時間がかかります。通常、報告書が完成してから承認されるまでに約3〜5ヶ月の時間がかかります。
(4) 売電関係の手続きについて
- PPA(電力購入契約)の交渉プロセスは、EVN(ベトナム電力会社)の計画やスケジュール等に大きく依存しており、事業者がPPA交渉のプロセスを積極的に推進するのは難しいです。しかし、PPAに関する交渉や合意の取得は、建設や土地に関する手続きと並行して進めることが可能です。通常、PPAに関する交渉と合意のプロセスには、約8〜12ヶ月かかります。
- PPAの交渉手続きについては、【ベトナム電力会社(EVN)との売電契約関係の手続きについて】をご参考ください。
5. 太陽光発電プロジェクトへの投資における優遇措置
再生可能エネルギー事業は、2020年投資法第16条に基づき、投資優遇分野に指定されています。事業者は、自ら投資優遇措置を特定し、それに基づき、申請しますと、これらは投資方針決定書、投資登録証明書、または税務・財務・税関機関による個別文書で認められます。
2021年3月26日付けの政令31/2021/NĐ-CPに基づき、再生可能エネルギーの生産は特別に優遇される投資分野に分類され、事業者は以下の具体的な優遇措置を受けることができます。
(1) デポジットの優遇措置
前述のとおり、デポジット金額の減額(50%の減額)を適用されます。
(2) 税制
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- プロジェクトの固定資産を構築するために輸入される物品について輸入税を免除されます。また国内で製造されていない原材料、資材、部品の輸入についても、生産開始から5年間の間に、輸入税が免除されます。
- 新規投資プロジェクトによる企業所得税について、優遇税率10%を15年間適用されます。また、最初の4年間は免税、その後9年間は50%の減税が適用されます。
(3) 土地/水面の賃貸料
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- 権限のある機関が承認したプロジェクトに基づく基本建設期間中、土地・水面の賃貸料を免除されます。ただし、土地・水面賃貸の決定日から最長3年間までです。
- 投資優遇分野に該当するプロジェクトについて、基本建設期間終了後も3年間の土地賃貸料を免除されます。
- 経済的に困難な地域に投資されたプロジェクトについて、7年間の土地賃貸料を免除されます。
- 特に経済的に困難な地域に投資されたプロジェクトや、特別優遇分野に該当するプロジェクトについて、11年間の土地賃貸料を免除されます。
- 特に経済的に困難な地域に投資されたプロジェクトで特別優遇分野に該当する場合、15年間の土地賃貸料を免除されます。
(一般的に、太陽光発電プロジェクトの投資には、基本建設期間後3年間の土地賃貸料免除が適用されます。)
(ベトナム・ホイアン 写真家 株式会社 ネクストエイジ 代表取締役 内藤 裕二) |
注記: 税制:
土地/水面の賃貸料:
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