公開 2024年09月06日  I 更新 2025年03月08日

ベトナムビジネス契約における一般条項

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ベトナムビジネス契約における一般条項


契約 公開 2024年09月06日  I 更新 2025年03月08日
目次

契約を締結する際には、一般条項の重要性を理解し、それぞれの条項を適切に定めることが成功の鍵となります。本稿では、契約当事者の情報、定義条項、契約期間、不可抗力条項、秘密保持条項など、ベトナムに関する取引契約時に重要となる一般条項を解説します。また、国際的な契約における準拠法や紛争解決方法の選択、税務関連条項など、ビジネスの安定と信頼性を確保するためのポイントも網羅しています。

契約の分類によって、必要な条項・条件を個別に検討する必要がありますが、少なくとも、以下の一般条項を規定するのが一般的です。

 

条項

提案内容

1

契約当事者に関する情報

  •       契約当事者に関する情報:会社名(名称)、所在地、当事者の法的資格を証明する書類に関する情報
  •       契約の署名権限者(法人の場合は、法定代表者)

2

経緯

  •       契約の締結に至るまでの経緯
  •       契約締結までの当事者の内部意思決定の表示

3

定義条項

両当事者間で、用語やその解釈を一致させるために、定義条項が必要です。

契約の個別条項として規定する場合と、契約の本文中で定義する(契約が短い場合)という二つのパターンがあります。

4

契約期間条項

契約期間

“注意事項”

  •       契約期間は、一定の期間か、期間を設定しないのか
  •       契約の署名日と効力日は、別々であること
  •      自動更新条項を設定するかどうか、契約更新の条件を明記(例:協議による更新、一定の実績達成による自動更新、一方当事者の意思による更新)
  •       契約終了日の明記(具体的な日付か、一定条件・事情の発生によって終了するか)
  •       契約の途中解除

通知条項

通知方法(特定の方法を定めるか、制限しないか等を選択できます)、通知先になる担当者の情報、その変更に関する通知、通知の受領解釈

最終性条項・修正・変更条項

契約に至る前の経緯(MOU、合意文書、契約のドラフト等のやり取り)がありますが、契約前の合意内容は、すべて契約に反映した上で、両当事者間の最終的な効力を有するものとする必要があります。

また、契約の修正・変更の方法も定めておく必要があります。契約を締結した後に、担当者レベルで契約と違った内容を口頭で合意してしまう場合も想定されるためです。

契約譲渡制限事項

ベトナムで契約を締結した後、様々な事情でその契約の債権・債務を第三者又は関係者に譲渡したいとの要望が少なくないです。そのような際に、自らの判断で譲受者の条件等を確認し、合意できる方法を準備する必要があります。

“契約で定めるよくあるパターン”

  •       譲渡の禁止
  •       書面による同意を必要とする
  •       例外を設け、一部の制限された者(グループ会社や関係者)への譲渡を認めること

契約解除条項

以下の3点については規定することがお勧めです。

  •       解約理由の取り決め
  •       解約に関する手続
  •       解約によって発生する法的な効果、当事者の義務・責任

不可抗力条項

以下の点について、規定することがお勧めです。

  •       不可抗力に該当する事故(法律に定めない事故を合意する場合には、その明記が必要です)
  •       金銭債務への不適用
  •       通知義務
  •       不可抗力の長期化による解除権

10

国際的な契約に適用する条項

  • 準拠法(基本的に当事者が自由に選択することができます。)
  •       紛争解決条項(基本的に、当事者が自由に選択することができます。ベトナムの裁判、仲裁又は日本の裁判、仲裁もしくは第三国の裁判・仲裁のいずれかを選択することができますが、以下の二点には注意する必要があります。
    •      裁判にする場合は、事前に裁判の管轄を確認する必要があります。
    •      ベトナム以外の外国での判決・判断をベトナムで執行するためには、ベトナム裁判所での執行承認手続をする必要があります。ベトナムでの執行承認手続の際に、「ベトナム基本原則に違反する」という理由で、当該判決・判断を取り消すこともあります。
    •      仲裁にする場合には、有効となる仲裁合意の文書を規定する必要があります(それぞれの国の仲裁合意条項のサンプルをご参考ください)
  •       契約の言語:優先言語の定めも必要です。

11

無効規定の分離可能性条項

意図的に、又は法律・政策の改正等によって契約の一部条項が現行法令の強行規定に違反することがあります。その条項を分離し、別の条項に影響しない限り、別の条項の効力を維持する旨の規定を定めておくのが適当です。

12

秘密保持条項

多くの契約の締結段階でも、履行段階でも一方当事者の秘密条項を他方当事者に開示する必要があります。第三者等に漏洩するのを防ぐために秘密保持条項が必要です。秘密保持条項には、以下の内容を定めることをお勧めいたします。

  •       秘密条項の定義規定
  •       秘密保持義務の範囲、その例外
  •       秘密保持義務に違反した場合の処分(付随的な損害、けん制的な損害の責任追及についても明記する必要があります)
  •       秘密保持期間(別途結ぶ取引契約期間より長いものでも問題ありません。)

13

税務に関する条項

両当事者の協議の上、税金の負担、課税の申告、納税者(又は納税代行者)、納税実施タイミング、納税証明書の送付義務等の明記が必要です。

 

14

その他一般条項

  •       表明・保証事項
  •       事情変更条項
  •       贈収賄禁止条項
  •       個人情報保護条項
  •       相殺条項
  •       見出し条項(条項のタイトル)
  •       副本条項
  •       存続条項

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