(具体例)例えば、日本の投資家Xは、ベトナム市場において自社商品の販売を計画しています。当該計画を実施するにあたって、最終的には現地法人を設立しようと考えていますが、事前に、市場テストのために、まず、ハノイで駐在員事務所を設立することにしました。当該駐在員事務所は、親会社の連絡事務所としての機能を果たしながら商品のマーケティング活動を実施することができますが、営業活動を行うことができないため、直接顧客と契約を締結することができません。そのため、日本の投資家Xは駐在員事務所設立一年後に駐在員事務所を閉鎖し、現地法人の設立を進めることになりました。(具体例終) このように、ベトナム国内で小売等のビジネスを行うに当たっては、現地法人設立の前準備として、市場テストのための駐在員事務所を設立するメリットは大きくありません。市場テストをしたいのであれば、ベトナムでの代理店や貿易業者を利用して、ベトナム国内の顧客探索活動や商品のマーケティング活動を行うことが可能です。その際には、日本から必要な人材を派遣して直接それらの活動に関与することができます。もし、ベトナム市場が貴社にとって魅力的であることが確認できれば、すぐに直接法人を設立することで、駐在員事務所の設立や運営、社内異動、閉鎖等にかかるコストの負担を軽減できるのです。
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01 - ベトナムへの進出形態一覧 |
外国投資家は、ベトナムに進出する場合、以下の進出形態から選択することができます。
- 現地法人の設立
- 支店の設立
- 駐在員事務所の設立
- BCC(事業協力契約)の締結
- PPP方式による投資(官民協力方式)
- 法人等を設立せず貿易を活用
- 国境を超えるサービスの提供
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02 - 各形態の特徴について |
2‐1 |
現地法人の設立 |
(1)現地法人の設立を選択する主な理由
§ 現地法人を設立する必要のある事業を展開したい(製造業、国内販売事業、広告事業等)
§ 親会社から独立した法人で事業を展開したい
§ 現地で人材を確保したい
(2)現地法人の設立を選択する場合には、以下の点を検討する必要があります。
① 出資者
現地法人を設立する場合に、出資者(又は株主)が必要です。その出資者は、法人に限定されるものではなく個人での出資も可能です(※ただし、事業内容によっては、出資者が法人に限定され、また、法人における実務経験が要求されることがあります。)。また、外国投資家の単独(100%)での出資と現地のパートナーと一緒に組んで合弁企業(共同出資)の形で設立するという二つの方法があります。
“注意点”
§ 外資100%で出資したい場合には、まず、進出予定の事業が100%外資でも進出できるかどうかを確認しなければなりません。
§ 外国投資家は、基本的に法人でも個人いずれでも出資可能ですが、一部の事業は、法人のみの出資が可能となります(銀行、保険、法律等の事業・分野)。
② 会社形態の選択
会社形態は、以下の四つから選択することができます。
a. 有限会社(一人有限会社、二名以上の有限会社)
※日本の株式会社に類似しており、実際に選択する外国投資家が多い形態です。
b. 株式会社
c. 合資会社
d. 合名会社
(合資会社(無限責任と有限責任の組み合わせ)と合名会社(無限責任)を選択するメリットはほとんどありません。実際に選択する事例もほとんど見られません。)よく選択される形態は、有限会社です。
③ 法人保有の方法
現地法人を保有するためには、新規設立と既存法人のM&A(持分・株の購入)という二つの方法があります。M&Aについては、既存の会社を購入するか、名義人(名義法人)に新規会社を設立させ、その後、その会社を購入するという選択肢もあります。
2‐2 |
支店の設立について |
支店は、限定的な業種に限って設立することができるものです。具体的には、次の事業に該当する場合のみ、支店の設立が認められます。
a. 法務サービス |
司法省管轄 |
a. コンピューターサービスおよびそれに関連するサービス |
情報通信省管轄 |
b. マネジメントコンサルティングサービスおよびそれに関連するサービス |
商工省管轄 |
c. 建設サービスおよびそれに関連するサービス |
建設省管轄 |
d. フランチャイズ・チェーンサービス |
商工省管轄 |
e. 金融サービス(保険、銀行、その他の金融サービス及び証券サービスを含む) |
財務省管轄 中央銀行管轄 証券管理委員会管轄 |
“注意点”
§ 支店設立は、管轄当局(上記表に記載がある管轄当局)の承認を得る必要があります。
§ 外国法人(外国投資家)の支店設立はベトナム法人(外資企業を含む)の支店設立と異なり、外国からの進出の一つの方法として取り扱い、ベトナムに進出するためのライセンス(会社設立の場合の投資許可証と同様)を取得する必要があります。
2‐3 |
駐在員事務所の設立について |
駐在員事務所は、一定の条件を満たせば、比較的に簡単に設立することができます。しかしながら、駐在員事務所は、直接営業活動(クライアントとの契約の締結、利益をあげる行為等)を行うことができず、連絡事務所としての窓口対応・商業促進・マーケティング活動、市場調査等といった、限定的な範囲での活動しかできないという欠点があります。
【駐在員事務所の設立を選択する主な理由】
§ 現地法人を設立する前に、一時的に市場調査や現地法人設立によって収益を得られるか等を検討し、また、駐在員事務所でコストを抑えてベトナムについて把握したい等のニーズがある場合
§ 現地法人の保有と同時並行で駐在員事務所を設置し、同事務所に商業促進や情報収集に機能を集中し、また、同事務所から必要な費用の支出を行う場合(一般的に、現地法人よりも駐在員事務所では、会計・税務の対応の負担が小さい。)
§ 親会社のベトナムでの知名度を高めたい場合
2‐4 |
BCC契約の締結について |
· BCC契約(事業協力契約)とは、外国投資家とベトナムパートナー(ローカル会社や外資企業)との間で締結する契約です。基本的に合弁契約とほぼ同じですが、法人を設立せずに、契約ベースで一つの事業(または投資プロジェクト)に出資し、一緒に事業を展開する方法です。
· BCC契約は、必ず法定の様式に従って、締結する必要があります。契約を締結した後、BCC契約の登録(投資登録証明書の取得と同じ)を行わなければなりません。
· 法人を設立しなくても、現地の会社と一緒に事業を展開することができるという大きなメリットがあります。しかしながら、1つの契約では、複数の投資活動を行うことができません(契約ごとに登録・承認を得る必要があります)。また、契約での拘束力のみで当事者の権利・義務を確保するため、相手の当事者が簡単に契約を解除することができます。また、一般的に、BCC契約の事業を運営する当事者が基本的にはベトナムでのパートナー(又はベトナム現地法人)であるため、日本側からコントロールすることが困難です。
2‐5 |
BCCの締結について |
PPP方式では、通常の投資・事業目的では選択できず、次に記載がある、国が認める投資分野に限定して投資することができます。
投資分野 |
最低総投資額 |
道路運送業、鉄道運送業、内陸水路運送業、海上運送業、航空運送業 |
1兆5000億VND |
再生可能エネルギー電力、石炭火力電力、ガス火力電力(液化天然ガス- LNGを含む。)、原子力、電力網の設置。ただし、水力発電その他、電気法に定める国家独占の場合を除く |
1兆5000億VND |
灌漑、上下水道、排水処理、廃棄物処理 |
2000億VND |
診察・治療施設、予防医療、検査 |
1000億VND |
教育、訓練、職業教育インフラ等の施設への投資 |
1000億VND |
デジタル情報・デジタル経済インフラ、共産党・国家機関におけるITの近代化、情報技術・データベース・データセンターの適用と開発、共通の国家プラットフォーム・アプリケーション ・ サービス、ネットワークセキュリティ、人と企業に奉仕するアプリケーションとサービスのシステム、スマートシティのための情報通信技術(ITC)インフラ |
また、当該投資形態を選択するには、ベトナム政府による投資家の選定プロセス(入札等を含む)を経る必要があります。
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03 - 貿易関係のスキーム |
3 - 1 |
現地での販路開拓方法 |
日本の製品をベトナムに輸入し、多方でベトナムの原材料を日本に輸出するという貿易を利用したベトナムでのビジネスは、従前からよく採用されています。ロジスティクスやEC等のインターネット販売のプラットフォームの発展と共に、両国の貿易関係も取扱金額が順調に伸びています。日本の商社や製造業の会社等は、早くから、ベトナムの市場に進出し、ベトナム国内の販路開拓を進めています。
ベトナムでの販路開拓を行う際に、ベトナム現地パートナー企業・取引先との交渉時や、契約履行時において、法的に一番注意すべきポイントは、以下の通りです。
· 契約関係の整備(そもそも、契約書を作成しない企業も多いですが、しっかりと契約書を作成し、互いの認識を一致させた上、契約履行の管理を行う必要があります)
· 債権回収の対策の検討(貿易関係の債権回収は、非常に困難です。そのため、契約時から債権回収の問題を懸念し、十分な対策(デポジットの設定、担保設定、前払い等)を講じる必要があります)
· 品質保証やアフターサービスに関する対策
販路開拓のビジネスモデルについて、一般的には、以下の三つの方法から選択することができます。
① 直営店運営
② 代理店の利用
③ フランチャイズの活用
④ 上記の①~③までの組み合わせ
3 - 2 |
国境を超えるサービスの提供 |
ベトナムでの現地拠点がなくても、ベトナム国外から国境を越えてベトナム国内向けにサービスを提供することができるものがあります。
“例”
· お互いに資本関係等がない、在日本企業と在ベトナム企業との間で設計業務委託契約を締結し、在日本企業が在ベトナム企業にメール等により成果物を納品する場合
· お互いに資本関係等がない、在日本企業と在ベトナムの病院との間で医療技術支援契約を締結し、在日本企業が日本国内から在ベトナムの病院のスタッフ等に対し遠隔で医療技術の指導を行う場合
· 在日本企業が、ホームページ等による集客でベトナム国内において人材を募集し、その人材を別の在日本に紹介する場合
上記の例では、在日本企業は、ベトナム国内に現地拠点を作らなくても、ベトナムの会社・利用者と契約して、日本からサービスの提供、成果物の納品を行います。この進出の方法は、一番コストの負担が少なく、すぐに事業展開ができます。