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01 -「キックバック」と暗黙のルールという問題 |
ある日、私の故郷で隣人のおじさんが遊びに来て、彼の息子について話してくれました。その息子さんはある会社の購買部門で働いており、基本給は数千万ドン程度だそうですが、「柔軟な収入」、つまりキックバックが非常に多く、毎年テト(旧正月)には大量の贈り物を車いっぱいに積んで帰ってくるそうです。親族一同がその恩恵に預かっているとのこと。おじさんは誇らしげに話し、「親が教育を施し、人生が賢さを教えた結果だ」、「賢さがあってこそ柔軟に立ち回れる」等と言っていました。
【キックバックが暗黙のルールとして受け入れられる現状】
キックバックは、非常に基本的な場面から広がっています。たとえば、観光ガイドが旅行客を店舗に案内し、商品やサービスの売買が成立すると、ガイドが店主から事前に合意した割合のキックバックを受け取るといったものです。これは世界中の観光業で一般的な「暗黙のルール」であり、通常は双方に利益をもたらします。しかし、ベトナムでは一部のガイドがその率を30%~40%にまで引き上げるケースがあり、サービスの質に悪影響を与え、事業者にとって大きな負担となっています。
企業内では、文房具や定期健康診断、イベントの企画、短期人材派遣などの小規模な契約から、オフィスや車両のリース、材料調達、食事提供などの定期契約に至るまで、購買部門の従業員がキックバックを受け取ることは珍しいことではありません。このような慣行は「当然」とされ、「そのポジションにいれば誰でもそうする」と考えられがちです。そのため、キックバックが汚職事件に発展しない限り、社会的に批判されることはあまりありません。
特に問題が顕著なのは入札案件です。イベント企画や旅行手配、資材調達の供給業者を選定する際、担当者が10%前後のキックバックを受け取るのが一般的です。場合によっては、その率が15%~20%に達し、中堅企業にとっては契約利益を上回る負担となります。このような状況では、税金やその他の追加費用をカバーするための対応を迫られることが少なくありません。もし企業がキックバックの支払いを拒否した場合、契約を失い、他の供給業者に取って代わられることがほぼ確実です。
アメリカ、ヨーロッパ、日本などの企業は、長年にわたり「キックバックを排除する」という慣行を守り続けています。これらの国では、賄賂の提供者も厳しく処罰されるため、ベトナム国内であってもキックバック文化に従うことは難しいのです。その結果、入札で優れた提案や技術、経験、サービス品質を持ちながらも、契約を得ることができず、手ぶらで撤退せざるを得ないケースが多々あります。
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02 - キックバックの具体例 |
日常生活におけるキックバックの例 |
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ビジネス関係におけるキックバックの例 |
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企業内部におけるキックバックの例 |
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