公開 2024年09月06日  I 更新 2025年03月08日

ベトナムでの契約法務の注意点 ~日越間の契約の違いとベトナム市場での成功の秘訣~

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ベトナムでの契約法務の注意点 ~日越間の契約の違いとベトナム市場での成功の秘訣~


契約 公開 2024年09月06日  I 更新 2025年03月08日
目次

ベトナムでの契約書作成は、企業規模や契約の重要性に応じてさまざまな課題が発生します。本稿では、大手企業と中小企業が直面する問題、ベトナム法に馴染みのない制度や条文の導入によるリスク、日越間の契約文化や法律等の違いについて概観します。さらに、契約の透明性と実行可能性を確保するための具体的な解決策を提供します。

01 - ベトナムでの契約書は、どのように作成されたのか?

 

日系企業を含む大手の在ベトナム企業と中小企業の契約書作成の流れは、次のとおりに、少し異なっています。

上記の流れで作成した契約書は、どのような問題があるかについては、次のとおりです。

     ①  大手の企業(法務部がある)又は契約額が大きい又は重要な契約(財産の譲渡契約、EPC契約、合弁契約、事業協力契約、代理店契約等)の場合は、以下の問題があります。

  •        契約書が長大、複雑すぎる

法律で定めてある内容でも、そうではない内容でも、全て契約に盛り込むのがよくあるパターンです。そのような書き方ですと、契約のボリュームが増えてしまい、契約書を読む者にとって時間が取られる等有害な可能性があると感じています。

    “コメント”

    それを解決するためには、次の2つの対策が考えられます。

    • 本来であれば、契約に記載する必要がない条項を削除すること(法律によって規定された内容等)。ただし、前提として、その法律の存在やその趣旨を両方当事者が認識する必要があります。
    • 本来契約に定めるべきではない内容もそのまま契約に入れ込むが、契約内容の全体について、両者の把握や認識を十分に確認できるように、契約の説明会や協議の立ち合いを作って、適切に実施すること
  •       ベトナムに存在しない制度の導入 

外資系企業の法務担当者(外国人)や、海外に留学した弁護士のアドバイスをもとに契約を作成する場合には、ベトナムにない制度を導入することが少なくないです。言葉の分かりにくさは、もちろん、その条項の内容自体がベトナムの法律に馴染みがない場合があります。もちろん両当事者で合意ができれば、そのまま実施することができます。しかし、万が一紛争等になった際に、裁判所は、その条文の効力を認めない可能性があります。

     “コメント”

     契約の紛争解決の管轄機関は、裁判所である場合には指摘した問題が生じるため、仲裁を用いることで、ベトナムに存在しない制度や条項の効力が認められる可能性が高まります。

     ②  中小企業(法務部がない)又は契約額が小さい又は重要ではない契約(日々の購買契約、雇用契約、サービス契約等)の場合には、次のとおりに非常に多くの問題点が見受けられます。

  •       契約の有効性に疑義があるもの(署名者の権限や、会社の事業内容等)
  •       本来あるべき条項が入っていないこと
  •       取引等に関連のない条項があること
  •       法律違反の条項があること
  •       条項があっても、契約を履行していないこと(会計上の処理、義務の不履行等)

 

02 - 日越間の契約書の違いは?

 

ベトナム人弁護士である筆者が、日本人専門家が作成した契約書をレビューした経験によると、同契約書には一般的に次のような問題点を指摘できます。

  ベトナム法やベトナムの文化に馴染みがない条項を設置していること

     期限の利益の喪失に関する条項、反社会的勢力排除の条項、人権保護等に関する条項が入っている契約書がままみられます。ベトナムでは、そういった条文に該当する制度がありませんので、文脈だけでは理解できないことが多いです。それらの条文を生み出す日本での経緯や背景があるかと思います。しかし、ベトナムでは、似たような背景がないため、ベトナムだけで履行する契約の場合は、できればそのような条文を削除することが望ましいです。

  文章の構成が複雑すぎること

      日本人の作成する契約条項は分量的に長くすぎるだけでなく、その構成も複雑すぎることが見受けられます。その文書を翻訳だけでも工夫する必要がありますし、場合によって原文の意味を十分に伝わらない可能性もあります。翻訳を前提する場合には、文章はシンプルな短文で作ることが望ましいです。

  条文を作る背景があるため、それを理解できなければ、内容が伝わらないこと

     当然ですが、契約書は、当事者間の約束であり、当事者間の合意に基づいて作成されるものです。そのため、原則的には当事者間だけ理解できれば十分です。しかし、万が一紛争等になったら、その契約書を裁判所や仲裁に開示する必要があります。そうなった場合には、文書を作成する背景まで説明しないと、文書の意味を解釈することができません。ただし、紛争になった時に、契約を作成した当事者を証人として召喚できるかどうかも、大きな問題です。

そもそも紛争にならない場合でも、後任者や他の関係者が見ても意味が容易に理解できる必要がありますので、契約の透明性、具体的性を確保すべきだと考えられます。

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