公開 2025年06月30日  I 更新 2025年06月30日

外国人投資家向け規制が刷新:ベトナムの間接投資口座 に関する通達

※無断で複製、転載、転用、改変等の二次利用をご遠慮いただきますようお願いいたします。

外国人投資家向け規制が刷新:ベトナムの間接投資口座 に関する通達


M&A 公開 2025年06月30日  I 更新 2025年06月30日
目次

弁護士法人ベトホ(BETOHO LAWFIRM)は、外国人投資家によるベトナムでの資本取引や金融規制への対応に豊富な実績を持ち、投資資金の送金、出資、株式譲渡に伴う銀行手続き・法的制限についても専門的に支援しています。特に近年、間接投資に関する口座開設・資金管理・情報開示に関する規制が強化されつつあり、実務での適切な運用が不可欠です。 本記事では、「ベトナム 投資家口座 間接投資」「外国人 投資用口座 開設要件」「資本取引と外為管理」「間接出資と送金ルールの違い」「投資マネー洗浄対策」などのキーワードに関心のある方向けに、間接投資に関連する投資家口座制度の変更点と、企業・投資家が取るべき対応を実務目線で解説しています。

2025429日、ベトナム国家銀行は、「通達第03/2025/TT-NHNN号」(以下、「通達03/2025」)を公布し、ベトナムにおける間接投資活動のための投資資本口座(IICA)の開設および利用に関する新たなガイドラインを定めました。本通達は、2025616日より施行され、従来の「通達第05/2014/TT-NHNN号」(2014312日公布)を正式に廃止・置換するものです。

通達03/2025は、外国人投資家にとってより明確でアクセスしやすい法的枠組みを提供しており、IICAの開設・利用に関する手続きが整理・簡素化されています。とりわけ、用語の定義、対象となる投資形態、資金移動の条件、口座運用の範囲などが明確に規定されており、外国投資家が安心してベトナム市場に参入できる環境が整えられています。この改正は、ベトナムにおける間接投資制度の透明性と一貫性を高め、外国人投資家にとっての利便性と信頼性を向上させる重要な一歩といえます。

 

01 - 用語変更と適用範囲の明確化

 

  •    通達03/2025では、用語および適用範囲に関する重要な変更が行われました。具体的には、「間接投資資本口座(IICA)」という従来の名称が、「間接投資口座(IIA)」に変更され、投資活動における口座管理および運用の簡素化と明確化が図られました。この名称変更は、実務上の理解を容易にし、外国人投資家にとって制度へのアクセス性を高める意図があります。
  •    また、本通達の適用対象は、ベトナムにおける非居住の外国人投資家とされており、具体的には外国法に基づいて設立された法人および外国国籍を有する個人が含まれます。

 

02 - IIA(間接投資口座)の開設および利用に関する規定

 

通達03/2025では、外国人投資家による間接投資口座(IIA)の開設および利用に関して、明確かつ厳格な新しいルールが導入されました。

  •     外国人投資家は、原則として1つの認可銀行に対して1つのIIAしか開設できません。ただし、外国証券会社、複数の投資ポートフォリオを持つ外国投資ファンド、外国政府系の投資機関、国際金融機関などの特別なケースについては例外が認められています。
  •     今回の改正では、IIAを共同名義(複数名義)で開設することが明確に禁止されました。

以前は複数名義による口座開設が可能であり、そのために名義や委任取引に関するトラブルが多く発生していました。本規定は、外国人投資家の権利保護を目的としていますが、反面、投資家本人がベトナムに常駐していない場合、店舗での取引(資金移動や口座解約など)が困難になるという実務上の制約も生じる可能性があります。

  •    さらに、すべての資金移動に関して、送金命令書にはその目的を明確に記載することが義務付けられています。

これは、銀行側が適正な資金の流れを確認し、書類を適切に保管・照合するための重要な措置です。実務上、多くの銀行ではすでにこの要件に従って運用されており、送金元資金の証明や証券取引の明細書の提出が求められてきましたが、今回の通達によりこれらの実務慣行が法的に制度化されました。

 

03 - IIA開設手続の簡素化と書類要件の緩和

 

通達03/2025は、外国人投資家にとって実務上の負担を軽減するため、IIA(間接投資口座)の開設手続および提出書類に関する複数の簡素化措置を導入しています。

  •     注目すべき点は、領事認証(領事の合法化)を原則として不要とした点です。これにより、外国語で作成された書類や外国の権限ある機関が発行した文書について、煩雑な認証手続きを省略できるようになりました。
  •    または、IIA開設時に提出する書類の中で、外国語文書または外国機関発行文書については、提出日から12ヶ月以内にベトナムまたは外国の法令に基づき公証または認証されていれば有効とされます。ただし、ベトナムの他の関連法令において公証を義務付けられている場合、または受入れ銀行や監督当局が通達03/2025の規定を「公証義務」と解釈する可能性もあるため、実務上は事前に確認が必要です。
  •     さらに、通達03/2025では、すべての外国語書類について翻訳は必須ではないと明記されています。ただし、銀行側が通達に基づいて必要な情報を正確に取得できる場合に限り、翻訳省略が認められるとされています。この点においても、翻訳の要否は銀行と顧客との個別の合意に委ねられるため、事前に協議しておくことが推奨されます。

これらの緩和措置は、ベトナムにおける間接投資制度の国際化および利便性向上を象徴するものであり、外国人投資家にとって大きなプラス要素となります。

 

04 - 外資企業における口座転換の規定と出資比率の見直し

 

通達03/2025では、外国人投資家による出資比率に基づく企業の分類および、必要な投資口座の種類に関する新たな規定が導入されました。

  •     具体的には、外国人投資家が出資する企業が「外国直接投資企業(FDI企業)」と見なされるための基準が、従来の51%以上から50%以上に引き下げられました。これにより、外国人持株比率が50%を超える企業は、直接投資資本口座(DICA)の開設が義務付けられることになります。
  •     該当する企業(外国人投資家の保有比率が50%以上51%未満)の場合、2025616日から起算して12ヶ月以内にDICAを開設する必要があります。この移行期間中、これらの企業に対して出資を行う外国人投資家は、既存のIIA(間接投資口座)を使用して資本参加または株式取得を行うことが認められています。

 

🔹外国人投資家および市場への具体的な影響🔹

通達03/2025の施行は、外国人投資家、商業銀行、さらにはベトナム全体の金融市場に対して多面的な影響を及ぼすと予測されます。

外国人投資家にとってのメリット
まず、IIAの開設手続や提出書類の簡素化により、手続の透明性と利便性が向上し、投資家の時間とコストの削減につながります。また、IIAを通じた取引の明確な規定により、法的要件や遵守事項の把握が容易になり、コンプライアンスの強化にも寄与します。

 

商業銀行に求められる対応
商業銀行に対しては、IIAの開設および運用に関する内部規定の策定と厳格な書類管理が求められるようになり、銀行の管理責任が強化されます。これにより、投資家の信頼性確保にもつながると考えられます。

 

ベトナム金融市場への影響
IIAを通じた資金移動のルールが明確化されたことにより、投資資金の流れを国家が効率的に監視・管理できる体制が整備されます。これは、マネーロンダリング防止や資本流出入の安定化に貢献する施策といえます。

さらに、通達03/2025/TT-NHNNは、ベトナム証券市場をフロンティア市場からエマージング市場へと格上げするための重要な法的枠組みの一つと見なされており、国際的な投資家基準に近づくための一歩といえます。

 

【責任免除事項】

本ウェブサイトに投稿している記事は、記事作成時点に有効する法令等に基づいたものです。その後の法律や政策等の改正がある場合は、それに伴い、記載内容も変更する可能性があります。法の分析、実務運用のコメントの部分については、あくまで直作者の個人的な経験や知識等から申し上げたことで、一般共通認識や正式な解釈ではないことをご了承ください。

また、本ウェッブサイトに投稿している内容は、法的助言ではありません。個別相談がある場合には、必ず専門家にご相談ください。専門家の意見やアドバイスがなく、本ウェブサイトの記載内容をそのまま使用することにより、生じた直接的、間接的に発生した損害等については、一切責任を負いません。

Duongbui@betoho.vn 0967 246 668