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01 - M&A承認申請時における価格情報の開示義務化 |
2023年12月31日付でベトナム計画投資省は、通達第25/2023/TT-BKHĐT号を公布しました。この通達は「ベトナム国内における投資活動、海外への投資活動および投資促進に関連する文書・報告書の書式」を規定しており、2024年2月15日から施行されています。
同通達の重要な変更点として、外国投資家がベトナム企業の株式・資本持分を取得する際(いわゆるM&A取引)の承認申請手続に関する新たな書式が導入されました。具体的には、外国投資家が申請書に記載すべき情報として、「実際の取引価格」の開示が求められるようになりました。
従来は取引価格について「予定価格」を記載するのみでよかったのですが、2024年2月15日以降は実際の契約価格を記載して、申請書類を提出する必要があります。具体的には、以下のフォマットになります。
順 |
外国投資家の名称 |
国籍 |
定款に基づく出資額 |
M&A取引の実際の取引価格 |
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VNĐ |
USDの相当額 |
割合(%) |
VNĐ |
USDの相当額 |
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この変更により、価格情報が公的書類に明確に記録されるため、投資家にとっては契約交渉や取引条件の戦略的な面で不利益を被るリスクが高まる可能性があります。投資家は、この新たな義務に対する適切な対応策を早期に検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが望まれます。
上記の内容については、M&A承認の申請書に記載するだけではなく、M&Aの承認書にも記載します。
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02 - この変更が投資家に与える潜在的リスク |
本変更は、M&A取引に参加する関係者、特に外国投資家に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には以下の通りです。
- M&A承認は通常、取引成立前(最終的に合意される実際の取引価格で支払いが実施される前)に取得されるため、承認申請時に正確な「実際の取引価格」を決定し記載することが難しい状況です。
- 実際の取引成立時に承認申請書記載の取引価格と実際の支払価格が異なる場合、関連銀行(特にベトナム国内のDICA銀行)は、承認内容との不一致を理由に決済処理を拒否する可能性があります。この場合、関係者はM&A承認を修正する必要が生じます。
- ただし、現行法規ではM&A承認を修正するための行政手続きが存在しないため、法令遵守と承認内容を一致させるためには、新たにM&A承認を申請し直す必要があります。新規承認の取得には数か月を要する可能性があり、その間にも取引価格が再度変更されるリスクがあります。
投資家は、この新たな義務に対する適切な対応策を早期に検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが望まれます。