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1. ベトナムへの進出形態一覧
日本投資家は、ベトナムに進出する場合、以下の進出形態から選択することができます。
- 現地法人の設立
- 支店の設立
- 駐在員事務所の設立
- BCC (事業協力契約) の締結
- PPP (官民協力方式)
- 貿易
- 国境を超えるサービスの提供
2. 各形態の特徴について
(1) 現地法人の設立
① 現地法人の設立を選択する主な理由
-
- 現地法人を設立する必要のある事業を展開したい(製造業、国内販売事業、広告事業等)
- 親会社から独立した法人にで事業を展開したい
- 現地で人材を確保したい
② 現地法人の設立を選択する場合には、以下の点を検討する必要があります。
i. 出資者
現地法人を設立する場合に、出資者(又は株主)が必要です。その出資者は、基本的に日本の企業もしくは日本の個人のどちらでも可能です(※法人として、かつ法人の実務経験を求める事業があります)。また、日本投資家の単独(100%) での出資と現地のパートナーと一緒に組んで合弁企業の形で設立するという二つの方法があります。
“注意点”
-
- 外資 100% で出資する方法にする前に、進出予定の事業が 100% 外資でも進出できるかどうかを確認する必要があります。
- 日本投資家は、基本的に法人でも個人でも大丈夫ですが、一部の事業は、必ず法人の出資を求めます (銀行、保険、法律等の事業・分野)
ii. 会社形態の選択
会社形態は、以下の4つから選択することができます。
a. 有限会社 (一名有限会社、2名以上の有限会社) ※日本の株式会社に近いです。
b. 株式会社
c. 合資会社
d. 合名会社
(合資会社(無限責任と有限責任の組み合わせ) と合名会社 (無限責任) を選択するメリットはほとんどありません。実際に選択する事例もほとんどないで す。) よく選択される形態は、有限会社です。
iii. 法人保有の方法
現地法人を保有するためには、新規設立と既存の法人をM&A (持分・株の購入)で取得するという二つの方法があります。M&Aについては、既存の会社を購入するか、名義者に新規会社を設立させ、その後その会社を購入するという選択肢もあります。
(2) 支店の設立について
支店については、すべての事業を開放し、どんな事業でも支店として設立することができるわけではないです。以下の事業に該当する場合のみ、支店の設立が認められます。
a. 法務サービス |
司法省管轄 |
b. コンピューターサービスおよびそれに関連するサービス |
情報通信省管轄 |
c. マネジメントコンサルティングサービス d. マネジメントコンサルティングサービスに関連するサービス |
商工省管轄 |
e. 建設サービス及びそれに関連するサービス |
建設省管轄 |
f. 商業フランチャイズ・チェーンサービス |
商工省管轄 |
g. 金融サービス(保険、銀行、その他の金融サービス及び証券サービスを含む) |
財務省管轄 中央銀行管轄 証券管理委員会管轄 |
“注意点”
- 支店設立は、管轄当局 (上記の表に記載する管轄当局) の承認を得る必要があります。
- 外国法人(外国投資家)の支店設立はベトナム法人(外資企業を含む)の支店設立と違って、外国からの進出の一つの方法として取り扱い、ベトナムに進出するためのライセンス(会社設立の場合の投資許可証と同様)を取得する必要があります。
(3) 駐在員事務所の設立について
駐在員事務所は、投資家が一定の条件を満たせば、比較的に簡単に設立することができます。しかし、駐在員事務所は、直接営業活動(クライアントとの契約の締結、利益をあげる行為等)を行うことができず、連絡事務所としての窓口対応・商業促進・マーケティング活動、市場調査等といった限られた範囲しかにおいて活動することができます。
【注座員事務所の設立を選択する主な理由】
- 現地法人を設立する前に、一時的に市場調査や法人化実施可能性を検討するために、コスト等を抑えて、まず駐在員事務所で活動したい。
- 法人の保有と同時並行で駐在員事務所を設置し、商業促進や情報収集に機能を集中させ、かつ必要な費用の支出を円滑に行いたい(法人より駐在員事務所の会計・税務の対応の負担が大きくない)
- 親会社のベトナムでの知名度を高めるための存在
(4) BCCの締結について
- BCC(事業協力契約)は、外国投資家とベトナムパートナー(ローカル会社や外資企業)との間で締結する契約です。基本的に合弁契約とほぼ同じですが、法人を設立せずに、契約ベースで一つの事業(または投資プロジェクト)に出資し、一緒に事業を展開する方法です。
- BCC契約は、必ず法定の様式に従って、締結する必要があります。契約を締結した後、BCC契約の登録(投資登録証明書の取得と同じ)を行わなければなりません。
- 法人を設立しなくても、現地の会社と一緒に事業を展開することができるという大きなメリットがあります。一方、一つの契約で複数の投資活動を行うことができません(契約ごとで登録・承認を得る必要があります)。また、契約での拘束力のみで当事者の権利・義務を確保するため、相手の当事者が簡単に契約を解除することができます。また、BCC契約の事業を運営する当事者であるベトナムパートナー(又はベトナム現地法人)に依存するため、管理面での困難があります。
(5) PPP方式による投資について
PPP方式は、通常の投資・事業目的に使えません。国が認める投資セクターのみ(以下に述べます)に投資することができます。
セクター |
最低総投資額 |
道路運送業、鉄道運送業、内陸水路運送業、海上運送業、航空運送業 |
1兆5000億VND |
再生可能エネルギー電力、石炭火力電力、ガス火力電力(液化天然ガス- LNGを含む。)、原子力、電力網の設置。ただし、水力発電その他、電気法に定める国家独占の場合を除く |
1兆5000億VND |
灌漑、上下水道、排水処理、廃棄物処理 |
2000億VND |
診察・治療施設、予防医療、検査 |
1000億VND |
教育、訓練、職業教育インフラ等の施設への投資 |
1000億VND |
デジタル情報・デジタル経済インフラ、共産党・国家機関におけるITの近代化、情報技 |
また、投資家になるために、投資家の選定プロセス(入札等を含む)を通る必要があります。
(6) 貿易関係
日本の製品をベトナムに輸入することや、ベトナムの原材料を日本に輸出することなどといった貿易関係は、従前から行われています。ロジスティクスや国際販売媒体の発展と共に、両国の貿易関係も発展しています。日本の商社や製造者は、ベトナムの市場に興味をもって、ベトナムでの販路開拓をどんどん進めています。
貿易関係の進出方法について、法的に一番注意する必要のあるポイントは、以下の通りです。
- 契約の整備(きちんと契約書を作成し、互いの認識を一致させた上、契約履行の管理を行う必要があります)
- 債権回収の対策の検討(貿易関係の債権回収は、もっとも困難なことです。そのため、契約時から債権回収の問題を懸念し、十分な対策(デポジットの設定、担保設定、前払い等)を講じる必要があります)
- 品質保証やアフターサービスに関する対策
(7) 国境を超えるサービスの提供
ベトナムでの現地拠点がなくても、国境を越えてサービスを提供することができるものがあります。
“例”
- 日本の会社とベトナム現地会社との間の設計業務委託契約を締結し、ベトナムの依頼を受けて、日本から納品する活動
- 日本の会社とベトナム病院との間で医療技術支援契約を締結し、日本からベトナムの病院に遠隔で医療技術の指導を行う活動
- 日本の会社は、日本に居ながらベトナム人の人材をインタネットで募集し、その人材を日本の会社に紹介する活動
上記の例では、日本の会社は、ベトナムでの現地拠点を作らなくても、ベトナムの会社・利用者と契約して、日本からサービスの提供、納品を行います。この進出の方法は、一番コストの負担が少なく、すぐに事業展開ができます。